米Gartner,Inc.によれば,通信事業者はこれまでブロード・バンド・サービスやモバイル・サービスで高い収益を得てきたが,売上高で見た時の成長率の急速な低下に直面しているという(発表資料)。同社は,通信サービスの売上高が,今後4年間で2006年の1兆3000億米ドルから2010年の1兆5000億米ドルまでしか増加せず,2010年の通信サービスの売上高の年間成長率は1.7%まで縮むと見る。結果として,今後4年間で多くの通信事業者が電話回線のようなこれまでの通信サービスにおける収益減少を補うために、メディア事業やIT事業といった新しい市場に投資するという。同社は,新規事業参入の例として,コンテンツ配信における伊Telecom Italia社と米Fox社,米MGM社,ソニーとの協業や,ITサービスにおける英BT Global Services社と米Hewlett-Packard社の協業を挙げる。
今後は新規事業に参入する通信事業者により,通信事業者とメディア企業,通信事業者とITサービス企業などの協業が増えると同社は予測する。しかし,この動きは価格競争の激化を招き,新規事業参入の半数以上が失敗するという。事業の多様化は,長期的に見れば収益成長の保証がなく,核となる通信事業の顧客を維持したいという意識やコスト・カットに対する関心を失うリスクが大きいという。そして,新規事業の価値を慎重に評価するよう警鐘を鳴らす。
同社は,通信事業者が今後収益を確保する確実な方法は既存の顧客の中にあるとして,2つのシナリオを挙げる。一つは,ネットワークの接続性を改善し,純粋な接続プロバイダーになること。コストを下げ,効率を上げれば,安定した収益が見込めるという。もう一つは,コンテンツ制作の事業へ参入するのではなく,インターネットをベースとするコンテンツへの接続サービスに集中することだという。