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 産業技術総合研究所とジャパンマテックスは,アスベスト代替ガスケットを開発した。このガスケットは,膨張黒鉛ガスケットに耐熱粘土膜を複合化し,-240~420℃までの広い温度領域で使用可能にしたもの。既存の非アスベスト製品より耐熱性や耐久性,耐薬品性に優れ,アスベスト製品並みの優れた取り扱い性を実現。こうした特性を生かして製油所などの化学プラントや火力発電所などへの適用を目指す。

 多くの化学産業分野では,プロセスの配管連結部などに,液体や気体のリークを防止するためのガスケットを用いる。特に高温部では耐熱性に優れたアスベスト製品が広く用いられてきたが,アスベストの健康被害への影響から2008年までの全廃を目標としている。とはいえ,代替品の開発はまだ途上で,安全性・信頼性の評価も進んでいなかった。

 これまで開発されてきた非アスベスト製品はゴムを含むため,耐熱性に限界がある。一方,膨張黒鉛製品は,耐熱性,圧密性,長期保存性,加工性などに優れるものの,製品表面から粉が剥がれる「粉落ち」が起って,配管内部を汚染する問題があった。またフランジに使用した場合には,新品と交換する際に,フランジ面に黒鉛が付着して剥がれにくくなり,配管のメンテナンスに手間がかかる。この問題を解決するために表面に樹脂をコーティングした製品も開発されたが,耐熱性に難があった。加えて黒鉛自体の特性として,400℃以上の高温の酸素雰囲気下では酸化劣化が進んでガスケットが痩せるため,シール性能が保てないという欠点があった。

 産総研は2004年8月,粘土結晶を主原料として樹脂を少量添加した,ピンホールがなく均一な厚みを持つ粘土膜「クレースト」を開発した。一方,従来から膨張黒鉛ガスケットを製造・販売していたジャパンマテックスが膨張黒鉛製品とクレーストとの複合化を提案し,2005年度に「地域中小企業支援型研究開発制度」を利用して基礎研究を開始した。その成果を基に2006年,産総研が「緊急アスベスト削減実用化基盤技術開発プロジェクト」を立ち上げ,製造技術の開発,製品評価試験,実プラントでの評価試験などを実施してきた。その結果,取り扱い性に関する各種試験や粉落ち・固着に関する試験のすべてで良好な評価結果を得た。加えて,実際の石油化学プラントの高温配管部を利用した実証試験を継続しており,短期評価の結果は良好という。

 今後さらに広範な性能評価試験を行うと同時に、長期信頼性向上などに取り組み、化学プラント産業用に加え、自動車産業、電力産業へと展開していく予定である。