森下仁丹(本社大阪市)は,合成高分子樹脂を皮膜とするシームレス・カプセルの開発に着手したと発表した。合成高分子樹脂で長期間安定なカプセルを形成し,種々の微生物や酵素類を包むことで,さまざまな用途に使えるという。これまで同社は,食品や医薬品向けにゼラチンや植物性の素材を使ってカプセルを生産していたが,新皮膜の開発により工業品分野にも用途を拡大する。
具体的な利用法は,粒径が数mmのシームレス・カプセル内に酵母やバクテリアなどの微生物を高密度で閉じこめ,固定化微生物とする。ゲルビーズに微生物を分散させた従来の固定化微生物と比べて,単位体積当りの菌数が多いため,高効率のバイオ・リアクターを造れる。これを使うことで,従来の発酵や微生物反応によって生産する物質の生産性が向上する。
高分子樹脂を使う利点の一つは,皮膜が従来より強固なため微生物がもれる恐れが少ないこと。従来は必要だったろ過装置を使わずに反応液を得られ,その後の精製や蒸留操作が容易になる。加えて,カプセルの大きさは1mm程度まで小さくできるため,特定の酵素や微生物を包めばバイオセンサへの組み込みも可能だ。さらに皮膜が長期間にわたり安定した状態を保つため,活性汚泥や特定の微生物を包むことで排水処理分野にも応用できる。
森下仁丹は今後,エネルギを開発するメーカーやプラントメーカー,化学メーカーなどへの供給を目指して開発を進めるという。