富士経済は,国内のマイクロマシン関連市場の調査結果を発表した(発表資料)。調査は2006年9~12月に,マイクロマシンの関連企業,研究機関,官公庁等への面接取材や文献調査などの形で行なった。今回の調査対象となったのは,製造機械であるメカ的マイクロマシン,MEMS,MEMS製造装置,MEMS設計や解析支援のためのソフトウエア,MEMSファウンドリ・サービスの市場である。
調査によれば,今後注目されるのはシリコン・マイクとMEMS圧力センサの市場だという。2006年のシリコン・マイク市場は21億円となる見通し。これが2010年には6.9倍の145億円の規模になると見込む。シリコン・マイクは音圧を感知するセンサで,Si薄膜とキャパシタの静電容量変化から音声信号を読み取るMEMS。現在小型マイクとして主流であるECM(electret condenser microphone)の代替品として,携帯電話機などのモバイル機器を中心に採用が進んでいるという。
製造工程が確立されているECMと比べると,コストは0.2米ドル程度割高だが,今後量産が進み参入企業が増えるに従い,低価格化が進むと見る。現在は携帯電話機向けの用途が多く,2006年の数量ベースでみると9割以上を占める。デジタル・カメラ,ゲーム機,ICレコーダーへの利用は,小型化へのニーズの低さやコスト高が影響して,現在は一部の採用にとどまっている。今後有望な用途は,パソコンOSに搭載される音声認識ソフトの音響部品だという。また,ECMに比べ温度劣化しにくい特性を生かして,自動車に搭載される可能性もあるという。
MEMS圧力センサの市場規模は2006年に375億円を見込む。2010年には,この市場が1.39倍の520億円に成長するという。主に自動車のエンジン・コントロール,油圧コントロール,カー・エアコンなどの用途に利用されており,2006年の数量ベースで見ると自動車用途が93%を占める。米国ではタイヤの空気圧検知用途で採用が始まっており,日本国内での普及も期待されるという。現状の自動車用途中心の市場の傾向は今後も続くという。
マイクロマシン関連市場の成長要因となる主な用途として富士経済が挙げるのは,携帯電話機と自動車の二つ。携帯電話機については,現在フラッグシップ機やハイエンド機を中心にマイクロマシンが搭載されているが,今後3軸地磁気センサなどの普及機への採用も増えると見込む。開発が進んでいる3軸加速度センサと3軸地磁気センサを複合した装置などは,高精度の電子コンパスとしてハイエンド機を中心に搭載される方向にある。
また,自動車向けではMEMS加速度センサ,MEMS圧力センサ,MEMSジャイロ・センサなどの採用が増えている。主な用途は車両の運転における安全を目的とした利用だが,最近ではカー・ナビゲーション・システムなどに搭載される例も増えているという。また,ハイエンド向けの車種だけでなく,ミドルレンジの車種や大型のバイクなどへの採用も見られるようになったという。