「原価率の改善や無理な値下げ戦略を取らないことで,増益を達成できた。ただし,PDPをはじめとして,依然今後の事業環境は厳しい」。パイオニアが発表した2006年10月~12月期(2006年第3四半期)の連結決算によると,売上高は2146億100万円で前年同期比1.1%減,営業利益は50億3400万円で同3.4%増と,減収増益となった。一方,2007年1月~3月期に関しては収益の悪化を予測しており,2006年10月末に発表した業績予想について下方修正した。
第3四半期の決算で特筆すべきことは,PDPテレビやDVDレコーダなどが含まれる「ホームエレクトロニクス」のセグメントが,2003年10月~12月期以来12四半期振りに黒字に転じたこと。同セグメントの売上は1129億9000万円と,前年同期に比べると1.7%減少したが,営業利益は前年同期が17億3300万円の損失だったのに対し,26億8900万円の利益となった。
同事業が黒字となった大きな理由は,事業構造改革の効果などによりPDPを中心に原価率が改善したこと。また,「PDPは,価格競争が激化したが,当社としては高付加価値で売っていくという路線は変えていない。当社のPDP価格の下落幅は10数パーセントにとどまり,想定を下回った」(同社 専務取締役の石塚肇氏)ことも黒字化に貢献した。PDPは,前年同期比で約10%の減収となったものの,営業損益は良化したという。また同事業の中では,DVDレコーダは営業損益が良化したが,DVDプレーヤや電話機は悪化した。
カーエレクトロニクス事業では,売り上げがカー・オーディオは減少したが自動車用ナビゲーション・システム(カーナビ)が増加したことで,前年同期に比べて1.2%増の853億9400万円となった。カーナビについては,特にOEMの売上が北米を中心に大きく増加したという。同事業での営業利益は31億7500万円と対前年同期比33.8%減。市販市場向けで,販売費が増加したことによる影響だ。
夏以降に投入する高機能PDPで差別化を図る
2006年4月~12月の9カ月の業績は,売上高が5949億2000万円で前年同期比7.0%増,営業損益が前年同期の117億9400万円の損失に対し167億2500万円の利益と黒字に転じる。一見好調そうに見えるものの,パイオニアは2006年10月末に発表した2006年度通期予想を下方修正した。売上高は8200億円を8000億円,営業利益は180億円を120億円,税引前利益は190億円を135億円,当期純利益は100億円を50億円に,いずれも下方修正した。
下方修正した主な理由はPDPの出荷数量が想定を下回ることによる在庫の増加。棚卸資産が前期と比べ225億円増の1387億円まで積み上がっている。棚卸資産回転日数では58日に相当する。2007年1月から3月期は,在庫を減らすためにいろいろな策を講じる。具体的には,小売店に対するマージンを増やすなどプロモーション費用を投じたり,また工場も生産調整を行う。このため,「収益は急激に悪化する」(石塚氏)。
また,会見の最後で,現在検討を進めているPDPの新工場建設について,建設計画を延期することを発表した(Tech-On!関連記事1)。「思ったほど需要が伸びなかったため」(石塚氏)。現在,同社のPDP生産能力は約97万台。2006年初めのPDP需要の伸びが順調だったときは,「このままパイオニアに対する需要も100万台を超えるのではないかと感じた」(石塚氏)。ところが実際は,PDPメーカー同士の争いに液晶パネルの大型化なども加わり,需要は横バイ。2006年度の同社のPDP製品出荷予想は64万台(今回72万台から下方修正)。現在の生産能力で十分に賄えるため,計画を延期した。
今後のPDPの販売戦略に関しては,引き続き高付加価値路線を継承していく。2007年夏に市場投入する予定の新製品は,2007年1月に開催された「2007 International CES」でも高い評価を得たという(Tech-On!関連記事2)。この新製品を価格競争に巻き込まれることなく投入できるように,現在マーケティング専門のコンサルタント会社と意見を交換している最中。他の製品と差別化することで,生産規模は小さくても利益の出る事業を目指す。
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