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図1●ワイブル・プロットの仕組みの説明 JEITAのデータ。
図1●ワイブル・プロットの仕組みの説明 JEITAのデータ。
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図2●ワイブル・プロットの実例 JEITAのデータ。
図2●ワイブル・プロットの実例 JEITAのデータ。
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図3●スクリーニングの意味の実例 上が「バーンインなし」の例。下が「バーンインあり」の例。JEITAのデータ。
図3●スクリーニングの意味の実例 上が「バーンインなし」の例。下が「バーンインあり」の例。JEITAのデータ。
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図4●グルーピングの説明 JEITAのデータ。
図4●グルーピングの説明 JEITAのデータ。
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 日本電子情報技術産業協会(JEITA)は,「半導体デバイスの加速寿命試験運用ガイドライン」(EDR-4704)の改訂を進めている。これによって過剰な試験を是正して,品質と試験コストのバランスの適正化を狙う。

 「半導体の品質は高いほうが良い」。チップのユーザーならば当然こう考える。すると,次には「品質をチェックする試験を厳しくすればするほど,品質は上がるはずだ」となる。この結果,例えば,「抜き取り検査の対象となるチップ数を増やして欲しい」とか「加速試験の時間を長くして欲しい」という要求が出てくる。

 しかし,試験を厳しくしても,ユーザーが期待するほど品質保証の確度が上がらないケースがある。一方で試験を厳しくすれば,試験時間が長くなるなど,試験のコストは確実に上がる。試験においても,コストと効果のバランスを適正化することが今回の改訂の狙いである。

 「厳しい試験=高品質の証」とユーザーが考えてしまうことには,さまざまな背景が考えられる。その一つが,コストと効果に対して,定量的な情報がほとんど開示されていないことが挙げられる。各半導体メーカーとも,半導体の信頼性に関しては,ハンドブックを作り,定性的には試験方法などを説明している。しかし定量的な説明は,基本的に個別折衝に入ってからになる。こうなると,半導体メーカーのA社とB社が示すコストと効果を,ユーザーが適正に比較することは容易でないケースが出てくる。

 そこで,今回の改訂版のガイドブックでは,従来は個別折衝でしか開示されなかったデータまで紹介することで,試験のコストと効果をユーザーに正しく認識してもらえるようにする。「定量的に例題を見せることで,ユーザーとメーカーの個別折衝の基準にしたい」(JEITA半導体標準化委員会半導体信頼性グループ)。半導体メーカーや製品名の記載はないが,「実際の製品で得たデータを載せている」(同グループ)。

1年後の不良率を効率良く予測

 例えば,多くのユーザーが注目する「初期不良による1年後の不良率」については,「加速試験をやればやるほど,同不良率を推定する確度が上がると考えているユーザーは少なくない。しかし,実際には少ない回数でも十分である」(JEITA)。これを今回のガイドラインではまず定性的に説明し,次に実際のデータを示した。

 定性的な説明の内容は,「試験で得たデータから動作時間と累積故障率をワイブル・プロットとしてグラフ化すると,同じ故障のプロットは一直線上に乗ることが知られている。このため,その直線を外挿すれば,1年後を含めて任意の時間における初期不良による累積故障率が予測できる」である(図1)。そして改訂版には,実際の製品を試験して得たワイブル・プロットが紹介されている(図2)。

 ワイブル・プロットの考え方によれば,同じ故障ならば,ウエーハ状態のプロービング試験で得たデータもパッケージング後の加速試験で得たデータも同じ直線に載る。初期不良による1年後の不良率の予測だけならば,ウエーハ状態のプロービング試験でも,かなりの確度で予測できることになる。この辺りの説明も改訂版のガイドブックに紹介がある。そして,加速試験の意味である「初期不良品のスクリーニング」も,実際のデータを使って説明してある(図3)。

不要な試験を記載

 上述した実データと共に,不要な試験について記載してあることも,改訂版のガイドラインでは目を引く。一般的な信頼性ハンドブックでは,試験とその効果が記載されており,基本的には信頼性試験の必要性を説明していることとは,対照的と言える。

 例えば,今回の改訂版ガイドラインの最後に「グルーピング」の考え方を示している(図4)。グルーピングとは同じ半導体プロセスで作る製品を,信頼性試験では同じグループに属するものとして扱うことを指す。そして,同じグループに属する製品ならば,信頼性試験の省略を検討できるケースを改訂版のガイドラインは紹介する。

 例えばチップ・サイズに関しては,「大きなチップ(メモリーならば大容量品)で信頼性試験を実施すれば,回路構成などに大きな差がない場合は,小さなチップ(同,小容量品)の信頼性試験を省略できる場合がある」とする。また,パッケージに関しても,「大きなパッケージに関して試験を実施すれば,その大きさ以下の同種のパッケージに関しては信頼性試験を省略できる場合がある」としている。

 なおJEITAは,この改訂版ガイドラインについて,2007年3月15日開催の「2006 年度半導体標準化委員会成果報告会」(関連ページ)の中で発表する予定である(同会の最後の報告がそれ)。