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図1 日立アプライアンス多賀事業所 本部。設計部門などが入居している。
図1 日立アプライアンス多賀事業所 本部。設計部門などが入居している。
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図2 映画「バブルへGO!!」に登場するドラム式洗濯乾燥機の展示。黄色は非売品。同形状の市販品は同工場で生産している。
図2 映画「バブルへGO!!」に登場するドラム式洗濯乾燥機の展示。黄色は非売品。同形状の市販品は同工場で生産している。
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図3 掃除機の工場に置かれたデジタル・セル。左上に液晶ディスプレイがある。
図3 掃除機の工場に置かれたデジタル・セル。左上に液晶ディスプレイがある。
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図4 掃除機の製造ライン。
図4 掃除機の製造ライン。
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図5 IHクッキング・ヒーターに使うコイル。左がFe鍋用。右はオール・メタル対応のコイル。巻き線などもこの建屋内で行う。
図5 IHクッキング・ヒーターに使うコイル。左がFe鍋用。右はオール・メタル対応のコイル。巻き線などもこの建屋内で行う。
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図6 IHクッキング・ヒーターの生産ライン。
図6 IHクッキング・ヒーターの生産ライン。
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図7 ドラム式洗濯乾燥機の生産ラインではベルト・コンベア方式を採用する。下から上へと組み立てるように作業していく。
図7 ドラム式洗濯乾燥機の生産ラインではベルト・コンベア方式を採用する。下から上へと組み立てるように作業していく。
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 日立アプライアンスは,報道陣に向けて同社の主力工場である多賀事業所(茨城県日立市)を公開した(図1)。同工場では,洗濯機,掃除機,電磁誘導加熱(IH)方式のクッキング・ヒーター,電子レンジ,炊飯器などを製造する(図2)。今回は掃除機とIHクッキング・ヒーター,ドラム式洗濯乾燥機「BD-V1」の三つの工場を公開した。工場の全体的な印象は「こじんまり」。多賀事業所の設立は1939年(昭和14年),つまり第2次世界大戦が勃発した年に当たる。古い建屋は築60年という。同社によれば,増改築しているものの,当時の状況に合わせて設計した建物を使っているため,最近の工場の建屋に比べると天井が低く,小さく見えるのではないかとする。ベルト・コンベアのラインに合わせて,奥行きのある建屋が多い。

 現在は,多くの工場でセル生産方式を採用している。同社がセル生産方式を導入し始めたのは10年ほど前からで,製品によっては2~3年前に導入したものもあるという。今回公開した三つの工場のうち,掃除機とIHクッキング・ヒーターはセル生産方式を採用していた。セル生産方式は白物家電の多品種少量生産には不可欠とする。一方で,同社の家電事業部 多賀家電本部長の鎌田栄氏らが繰り返し挙げた課題は「1人の作業時間が長く,作業の習得に時間がかかる」ことだ。1人の作業時間は,従来のベルト・コンベア方式であれば20秒~1分程度だが,セル生産の場合は長ければ10分に及ぶため,習得するのが難しい。

デジタル・セルを作業習得に活用


 掃除機の工場では,1人が1台の組み立てを担当する。品質確保のためには,作業員の教育が欠かせない。ここで力を発揮するのが「デジタル・セル」である(図3)。液晶ディスプレイの画像と部品ケースに取り付けたライトの点灯によって,組み立て手順を指示してくれるというもの。液晶ディスプレイには,作業手順の一覧と,今行うべき作業の様子の写真などが表示される。一般には,「デジタル屋台」と呼ばれることもある。ここでは,主に教育のためにデジタル・セルを活用している。作業員は組み立て作業を学習した後,実際に掃除機の組み立てに取り組み,1台ずつ分解して良品か不良品かを確認する。13台連続して良品を作れるようになって,ようやく実際の生産ラインに参加できる。

 1日あたり1人の作業時間は7.75時間。この間に,遅い人でも70台,早い人ならば130台を組み立てる。各人が目標の出来高台数を掲示するなどして,生産効率の向上を目指す(図4)。基本の機種は10機種だが,家電量販店向けなどを細かに分類すると機種数は30にも及ぶ。1セルで3~4機種を切り替えながら生産している。全セル数は57。月産台数は6万5000~7万台。年末の繁忙期になれば月産10万台を生産する。

 IHクッキング・ヒーターの工場でもセル生産方式を採用する。IHクッキング・ヒーターの基本は10機種だが,細かくは78機種を生産している。自社製品のほかに,電力会社向け,システム・キッチン・メーカー向けなどがあるため,多品種になってしまう。基本的な構造や部品は同じだが,供給先に合わせて天板の大きさや外装の色,操作パネルなどが異なる。さらに,発注数は「5台」といった少量であるため,セル生産でなければ対応はできないという。

重要部品は自分たちの手で


 重要と考えられる部品は,自社内で製造する。IHクッキング・ヒーターの場合,電磁誘導加熱に使うコイルが重要部品の一つだ。AlやCuの鍋も加熱できるオール・メタル対応のIHクッキング・ヒーターの場合,実質的な出力を上げるため,通常のコイルよりも直径が細く線数の多いより線を使っている。Fe鍋用のコイルは直径0.4mmで28本のより線だが,オール・メタル対応のコイルは直径0.05mmで1200本のより線である(図5)。こうしたより線の結線や巻きにノウハウがあるとする。運送時間の短縮などを狙い,組み立てを行うセルのすぐ隣でコイルを製造している。

 IHクッキング・ヒーターの組み立て工程は2工程に分けている。出来上がった製品を検査する商用検査と梱包まで含めると,1ライン7~8人で生産を担当する(図6)。1ラインで1日に生産できる台数は,50~70台。ラインは全部で14である。ここでもやはり作業の習得がネックとなる。新人を中心となる生産ラインに付かせることはできないので,まずは簡単な部品の組み立てから参加してもらう。あとは個々の習得具合を見極めてラインを担当できるように訓練していく。

斜めドラムはベルト・コンベア方式で


 一方,ドラム式洗濯乾燥機では,全長140mのベルト・コンベア方式を採用する(図7)。理由は主に二つあるという。一つは,1機種のみで発注数が多いこと。例えば,家電量販店ならば千台といった規模で出荷する。もう一つは,ドラム式洗濯乾燥機は重い上に構造が複雑で,セル生産方式だと部品やモジュールのハンドリングに手間取るためである。さらに製造開始から約3カ月と製品が若く,モジュール化が進んでいないことも一因とする。実は,このドラム式洗濯乾燥機はいわゆる斜めドラム方式で,同社は斜めドラム式の後発メーカーに当たる。そのため,製造ラインは他社のラインを参考に作ったという。同じ洗濯機でも,以前から製造している縦型洗濯機の場合はセル生産方式を採用している。

 ただし,ドラム式洗濯乾燥機でも,部品ごとにはセル生産方式を採用する。例えば,モータはスペーサ,ロータ,軸受けなどを組み立てて耐圧やトルクの全数検査を済ませたあと,本体の組み立て工程へと流す。このほか,パネルの塗装や洗濯槽の射出成形,プレス加工なども同じ建屋内のできるだけ本体組み立てラインに近い場所で行っている。このベルト・コンベア方式による生産台数は毎時400~450台という。