PR
Spansion Japan 代表取締役社長の田口 眞男氏
Spansion Japan 代表取締役社長の田口 眞男氏
[画像のクリックで拡大表示]

 フラッシュ・メモリ業界が激動の時代を迎えている。データ格納用途に使われるNANDフラッシュ・メモリは,単位容量当たりの価格が2006年の1年間だけで約1/5に急落した。NANDフラッシュ・メモリ・メーカーの収益は悪化の一途をたどっている。NANDフラッシュ・メモリの価格急落は,プログラム格納に使われるNORフラッシュ・メモリ・メーカーにとっても他人事ではない。NANDの価格低下に引きずられるかたちで,NORフラッシュ・メモリに対する価格圧力も強まっていくからだ。こうした状況下で,NORフラッシュ・メモリ・メーカーはいかにして事業を展開していくか。NORフラッシュ・メモリ大手メーカーである米Spansion Inc.の日本法人Spansion Japanの代表取締役社長に2007年3月1日付けで就任した田口 眞男氏(Tech-On!関連記事)に今後の戦略などを聞いた。(聞き手:望月 洋介,大石 基之=日経エレクトロニクス) 

問 社長に就任して社員には何らかのメッセージを伝えたのか。

田口氏  社員へのあいさつの場で,「『品格』を重視しよう」と述べた。ある種のイメージを持った言葉として,社員に理解してもらいたいと思ったからである。もともとSpansion社は,「ブランド」意識が強い会社だった。創業時から,「格好良い」会社にしようという意識が経営陣に強かった。企業のロゴなども大切にしてきている。例えば,他社と似たような製品を投入したとしても,顧客に「Spansion社の製品だから信頼して買った」と言ってもらえるような会社になることを目指してきた。こうした理念を受け継ぎ,世間に対して,なるべく早くSpansion社を認知してもらえるように努力する考えだ。このために,顧客に魅力のある製品,とりわけ「品質(クオリティ)」に優れた製品を市場投入することを常に目指していきたい。

問 なぜ「クオリティ」にこだわるのか。

田口氏  NANDフラッシュ・メモリへの差異化戦略を推進していく上で必要となるからだ。NANDフラッシュ・メモリ・メーカーは,必要以上のクオリティを追わずに,コストを徹底的に下げる戦略を採っている。クオリティを追わないというのは,例えば,ビット誤りなどをある程度許容していることを意味する。これに対して,我々の中核製品であるNORフラッシュ・メモリは,もともと,セル・データの信頼性などの品質面ではNANDフラッシュ・メモリより優れる。こうした特徴を生かして,セキュリティを重視する用途などを重点的に攻めていきたい。例えば,ネットワークを通じた電子商取引向けのメモリ市場は,NANDフラッシュ・メモリと同等以上の大市場に育つ可能性があると考えている。

問 セキュリティが求められるメモリ市場向けに,どのような製品を投入していくのか。

田口氏  NORフラッシュ・メモリにマイクロプロセサ・コアを搭載した製品を投入することなどで,新市場の開拓につなげたい。我々の製品は,論理LSIメーカーが提供するフラッシュ・メモリ混載LSIとは異なるものになるだろう。我々のコア・コンピタンスはあくまでも低コストのメモリ技術である。メモリの生産コストの低さを維持したまま,付加価値を付けていきたい。

問 そうは言っても,コストは重要だ。

田口氏  もちろんだ。我々のフラッシュ・メモリのビット・コストは,あくまでもNANDフラッシュ・メモリと同等を目指している。コストが同等であれば,品質に優れる分,我々の製品が有利になる。例えば,我々の多ビット化技術「MirrorBit」に基づくフラッシュ・メモリのコストはNANDとほぼ同等にできる。さらに,4ビット/セルのデータを格納する「MirrorBit Quad」のコストは,2ビット/セルのNANDフラッシュ・メモリと同等以下にできる。

問 Spansion社はデータ格納向け製品「ORNAND」の市場投入を始めている。ORNANDに対する顧客の引き合いはどうか。

田口氏  MCP(multi chip package)に内蔵されるかたちで,あちこちの携帯電話機への搭載が進んでいる。書き込み速度が顧客からの要求を十分に満たすほど高速であること,携帯電話機に最適なメモリ容量やメモリ構成を実現していること,さらにデータの信頼性がNANDフラッシュ・メモリより高いことなどが,顧客からの支持を受けている理由である。ORNANDは,単にNANDフラッシュ・メモリの代替ではなく,NANDフラッシュ・メモリとは異なる特徴を持つ製品として顧客に受け入れられ始めている。

問 NANDフラッシュ・メモリの価格が急落し続けている。データ格納向けフラッシュ・メモリ市場でどう生き残っていくのか。

田口氏  我々の主戦場は,今後も,NORに代表されるプログラム格納向けフラッシュ・メモリ市場であり続ける。とはいえ,NANDの低価格化にある程度ひきずられるかたちで,NORフラッシュ・メモリに対する低価格要求が今後は強まるかもしれない。ただし,我々のコストは決して,NANDフラッシュ・メモリより高いわけではない。いざコスト競争が始まっても,対応は可能である。