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1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災。
死者6432人のほとんどは圧迫死だったという。
がれきを,梁を,柱を持ち上げ,下敷きになっている人を助ける手段があれば―。
多くの人が考えた。
イラストは災害救助用ジャッキ「ガレキング」。
万が一のためにわざわざ用意するのでは,負担が大きく普及はしない。
クルマに必要なジャッキを,どうせなら流用してしまおうという作戦だ。

 2002年10月1日,2002年度のグッドデザイン賞が決まった。「新領域デザイン部門」という一風変わった部門で受賞したのが,この「ガレキング」。「新しい作法,マナーを提案」という,これも一風変わった項目が評価された。

 普段はクルマに積んでおき,いざというときには災害救助に使う。「積んでおくこと自体ボランティア活動になる」ということだろう。

大切なのは質より量

 発案者である東京工業大学教授の広瀬茂男氏はロボット工学で活躍中。ロボットの有望な使い道として救助ロボットの開発に力を入れていた。ところがロボットに限界があることが気になって仕方がない。高価なロボットが少数あっても限られた人しか救えない。救急車すら来ない,自分一人で助けるしかない状況では,道具がそばにあるかどうかが重要だ。そのためには圧倒的な台数をそろえたほうが本当に役に立つのではないか。道具感覚で使える装置が一家に1台,できれば一人に1台あった方がよい。

自動車用ジャッキの弱点を埋める

 そこで目を付けたのがクルマのジャッキ。クルマの数だけあれば日本中に7700万台あることになる。それを生かせないか。現実に,クルマのジャッキは阪神・淡路大震災ではある程度役に立ったようだ。ところが問題が2点あることもはっきりした。折り畳んだときの高さが10cm近くある,一番折り畳んだ状態で力が出ない―の2点だ。

 まず,折り畳んだときの高さ。10cmもあれば,災害救助には使いにくい(図)。10cmの空間を作ること自体が難しい。ねじを水平に配置したパンタグラフ型である限りこれを低くすることはできない。

 力の問題もパンタグラフ型という形式に原因がある。水平のねじでパンタグラフの左右2点間を縮めるため,動き始めには上向きの分力が小さい。タイヤ交換にはこれでよい。ストロークの始めはジャッキを畳んだ状態から車体に当たるまで,力のほとんどかからない部分だからだ。しかし災害救助にはこれでは困る。(以下、「日経メカニカル12月号」に掲載)

災害救助兼用ジャッキの動作(<A href="578l.mov">クイックタイム ムービー版はこちら(1.3MB)</A>)
災害救助兼用ジャッキの動作(<A href="578l.mov">クイックタイム ムービー版はこちら(1.3MB)</A>)
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【図】パンタグラフ式のジャッキ すき間が小さいと入らない。
【図】パンタグラフ式のジャッキ すき間が小さいと入らない。
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