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東京大学 生産技術研究所 物質環境部門 有機物質機能化学 教授の荒木孝二氏
東京大学 生産技術研究所 物質環境部門 有機物質機能化学 教授の荒木孝二氏
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複数の蛍光分子を水素結合によって柱状に配列
複数の蛍光分子を水素結合によって柱状に配列
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テトラフェニルピレンを使った事例
テトラフェニルピレンを使った事例
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圧力によって水素結合による柱状構造が乱れる
圧力によって水素結合による柱状構造が乱れる
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ペリレンを使った事例
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 東京大学 生産技術研究所 物質環境部門 有機物質機能化学 教授の荒木孝二氏らの研究グループは,加圧すると色が変わる有機蛍光材料の分子設計手法を確立した。この手法を使って2種類の感圧性蛍光材料の開発に成功している。開発した材料に文字の刻まれた「はんこ」を押し当てると,加圧された部分が周辺と異なる蛍光色を発するので,文字を判別できる。材料を加熱すると元に戻るため,再記録可能な感圧記録材料や圧力センサ,応力分布の可視化などに使える可能性がある。

 圧力や熱といった外部刺激によって蛍光色が変わる有機材料は多い。しかし,それらのほとんどは外部の刺激に対して分子そのものの化学結合状態を変えることで蛍光色が変化している。このため,繰り返し蛍光色を変化させると材料が劣化してしまう。そこで,荒木氏らのグループは分子そのものは変えずに分子同士の並び方を変えることによって蛍光色を変化させる手法を開発した。

 有機分子の並び方を変えることで蛍光色が変化することは,同グループが2005年に偶然発見していた(参考文献:Nature Materials, 4, 685, 2005)。今回はその知見を活用し,圧力によって分子間の相互作用が変化するような材料を設計した。具体的には平面状の蛍光を示す分子(蛍光分子)に水素結合サイトを設け,複数の蛍光分子が水素結合によって柱状に配列した材料を設計・合成した。ここに圧力をかけると水素結合による柱状構造が乱れ,蛍光分子間の距離が縮まることによって蛍光色が変化する。

 この手法を使って二つの材料を開発した。一つは蛍光分子としてテトラフェニルピレンを使った事例,もう一つはペリレンを使った事例である。いずれも水素結合サイトにはアミド基を使った。テトラフェニルピレンを使った場合,通常状態で紫外線を照射すると蛍光色は青色だが,圧力を加えた部分は緑色になる(参考文献:Journal of the American Chemical Society, 129, 1520, 2007)。量子収率が0.3と高いため,蛍光の強度は非常に高いという。112℃に加熱すると元の状態に戻る。ペリレンを使った場合では緑色の蛍光が加圧によってオレンジ色に変化することを確認した。なお,ペリレンを使った材料に関しては3月下旬に大阪で開かれる「日本化学第87春期年会」で詳細を発表する。