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図1 超電導デバイスを用いたスイッチ機器
図1 超電導デバイスを用いたスイッチ機器
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図2 スケジューラ回路とスイッチ回路を1チップに集積
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図3 100BASE-TX仕様のケーブルを通じてパソコンを4台接続
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図4 PC1に対して,PC2,PC3,PC4が映像を伝送
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図5 NEDO技術開発機構とISTECは,今回のスイッチ機器に加え,入出力ポートのデータ伝送速度を最大40Gビット/秒まで高めたスイッチ機器を試作した
図5 NEDO技術開発機構とISTECは,今回のスイッチ機器に加え,入出力ポートのデータ伝送速度を最大40Gビット/秒まで高めたスイッチ機器を試作した
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 NEDO技術開発機構および国際超伝導産業技術研究センター 超伝導工学研究所(ISTEC)は,超電導デバイスを用いたスイッチ機器を試作した(図1)。実際に複数のパソコンの間で映像データを転送できたという。今回の成果は,消費電力を抑えた大容量ルータの実現につながる可能性があるという。

 スイッチ機器の心臓部である超電導LSIは,パケットの経路を切り替える4入力4出力(4×4)のスイッチ回路と,パケットの衝突を防止する4×4スケジューラ回路を集積したもの(図2)。超伝導体であるNbをSi基板上に配線するSFQ*1(single flux quantum)素子で構成した。

*1 SFQ回路は,単一磁束量子をやり取りして情報処理を行う回路である。動作周波数が40GHz以上と高速である上,1ゲート当たりの消費電力をCMOS回路の約1/100~1/1000ほどに抑えることができる。ただし,ニオブ(Nb)を超伝導状態にするために,チップを超低温に冷やす必要がある。

 これまでISTECは,今回と同様の性能を持つスイッチLSIやスケジューラLSIを個別に試作していた(Tech-On!関連記事12)。今回は,これらの機能を1チップに集積したことに加え,複雑な操作なしでLSIを超低温に冷やせるクライオポンプ,Ethernetポートと超電導LSIを橋渡しする入出力インタフェースなどを組み合わせることで,実際にスイッチ機器として動作させた。「これにより,SFQ技術を応用した機器が,実験室内に留まらず誰でも使えるようになることを証明できた」(ISTEC デバイス研究開発部 部長代理 兼 低温デバイス開発室室長の日高睦夫氏)。

 動作実験では,100BASE-TX仕様のケーブルを介して4台のパソコンを超電導スイッチ機器に接続した(図3)。パソコンとスイッチ機器との間のデータ伝送速度は最大100Mビット/秒。超電導LSIそのものは入出力ポート当たり最大10Gビット/秒でデータを転送しているが,「EthernetとSFQ回路のインタフェース部については,FPGAの性能上の制約で100Mビット/秒以上にできなかった」(日高氏)という。このLANシステムで実際にデータを伝送した結果,誤り率が10-13以下と実用的な値になることを確認したという(図4)。このときのSFQ回路の消費電力は0.66mWと低かった。「一般的な半導体LSIで構成したルータ機器では100Wを超すだろう」(日高氏)。

 ただし今回の試作機は,システム全体では従来のルータ機器より消費電力が高くなる。チップを液体He温度まで冷却するために動作するクライオポンプが,6kWの電力を消費するためだ。「今はチップと外界を金属線でつないでいるため,1Wの消費電力に相当する熱がチップに流入してしまう。今後は,金属線でなく光配線を導入することで,熱の流入を抑えたい」(日高氏)。同氏によれば,2015年ごろに実現するスイッチ容量100Tビット/秒のスイッチ機器をCMOS技術で実現しようとすると,機器の重さが22トン,消費電力が320kWになる。これに対し,SFQ回路を利用したスイッチ機器ではそれぞれ200kg,10kWに低減できる可能性があるという。