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米国の調査会社であるYankee Group Research,Inc.は,中国の固定およびモバイル向けのWiMAXの状況について最新の分析結果を明らかにした。その内容は,固定のWiMAXについては各地で採用が続いているものの,モバイルWiMAXは,中国では政府が急激な変化を望んでおらず,モバイルWiMAX用の周波数帯の確保が進んでいないため,すぐにサービスが始まることはない,というもの。ただし,近い将来始まる見通しの中国版3G仕様「TD-SCDMA」のサービスが軌道に乗れば,モバイルWiMAXにも道がひらかれる可能性がある,という。

 モバイルWiMAXは,韓国,米国,台湾,および日本でサービス開始に向けた具体的な準備が進んでいる。これに向けて日本や韓国,台湾,米国,そして欧州まで幅広い地域の機器ベンダーが開発に参加している。中国ZTE Corp.(中興通訊)や中国Huawei Technologies Co.,Ltd.(華為技術)といった中国のベンダーもWiMAX関連の機器開発に熱心である。ところがサービスとなると,中国はモバイルWiMAXに対して消極的な姿勢を続けている。

 中国でも一部地域では,モバイルWiMAXを実用化する取り組みが進んでいる。武漢などがある内陸部の湖北省で,「中国Airway Communications Group Co. Ltd.が地方政府の許可を得て,モバイルWiMAXのサービスの準備を進めている」(Yankee Group社 APAC Research Vice PresidentのXJ Wang氏)という。ただしそれ以外では,周波数の割り当ての検討さえ公けには始まっていない。

新技術採用の必要がない

 Yankee Group社のWang氏によれば,中国の大部分でモバイルWiMAXの実用化が遅れている理由として,(1)通信事業者の寡占状態,(2)政府がTD-SCDMAを育てようとしている,ことの二つの理由が考えられるという。

 現在,中国の全国規模の通信事業者は,4社ほどしかない。このことが,市場の寡占状態が強まり,新しい技術の採用が遅れる傾向につながっている。「競争自体は激しいが,政府が設定した一定の枠組みの中での競争でしかなく,大手事業者3社の利益率は50%超と極めて高い」(Wang氏)。従来競争促進のために国営の巨大通信事業者が分割されて誕生したはずのChina Telecom Corp.(中国電信)とChina NetCom Group Corp.(中国網絡通信)が,南北の地域で事業を明確にすみ分ける「相互不可侵」の取り決めを結んでいることも寡占状態に拍車をかけているという。これが,モバイルWiMAXどころか,携帯電話の3G仕様でさえ敢えてリスクをとって挑戦する機運に欠ける結果となっている。

 さらに,「中国政府がTD-SCDMAを育てようとしているため,その競合となり得るモバイルWiMAXの推進に消極的になっている」(Wang氏)という事情もある。例えば,モバイルWiMAX用の周波数を確保する動きが生まれていない。電波の周波数のうち,2.3G~2.4GHzは現在使われていないが,近い将来に始まるTD-SCDMA向けの「聖域」とされている。米国などが利用する予定の2.5G~2.69GHz帯は,現在はケーブルテレビ用信号の無線伝送用に用いられており,しかも情報産業部とは別の政府組織(国家放送・映画・テレビ総局)が管轄であるため,情報産業部は手が出せない状況になっている。

TD-SCDMAの後にモバイルWiMAX

 ただし,モバイルWiMAXが実用化される可能性がまったくないわけではないという。「TD-SCDMAの事業があと1年~1年半のうちに軌道に乗ってくることが分かれば,モバイルWiMAXに対する中国政府の姿勢が変わることは大いにありえる」(同氏)。モバイルWiMAXの中国でのスタート時期は,TD-SCDMAの状況次第というわけである。

 そうした中,遅れに遅れながらもTD-SCDMAがようやく実用化されようとしている。2007年3月に中国China Mobile Communications Corp.(中国移動通信)が,事業用免許の発行を待たずにTD-SCDMAの機器の入札を開始したためである。中国国内では「北京や上海など主要都市で2007年10月にもサービスを開始する」という一部報道さえあり,免許の発行まで秒読み段階という見方もでている。ただし「TD-SCDMAの事業用免許が本当に発行されるのか,Yankee Groupとして100%の確信はまだない」(Wang氏)。