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UC BerkeleyとIntel社が共同開発したアンテナ
UC BerkeleyとIntel社が共同開発したアンテナ
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 米University of California,Berkeley校は米Intel Corp.との共同研究プロジェクト「Intel Research Lab」での研究成果の一つとして,ビーム・フォーミングの方向を電気的に制御できるアンテナの試作品を公開した(関連記事)。無線LANやWiMAXなどのマイクロ波帯での利用を主に想定する。「方向制御機能を従来にない新しい技術で実現した」(Intel Research Labで研究中のロシアNizhny Novgorod State University,Radiophysical Department Laboratory "Physical Fundamentals and Technologies of Wireless Communications", Head of the LaboratoryのAlexey L.UMNOV氏)ことで,高い利得と,適応的なビームフォーミング機能を低コストで実現できるという。

 新しいアンテナはUMNOV氏の研究チームが「reactance parasitic antenna array」または「reflect-array」と呼ぶもの。このタイプのアンテナは,少数のアクティブなアンテナ素子から発射した電磁場を,近接した多数のパッシブなアンテナ素子が反射してビームを形成する。試作したアンテナ素子の総計は数百本と非常に多い。ビームの方向は,電気的な制御で中心軸から30度まで数msの応答時間で変えられるという。ビームの幅は12度である。

「ビームの方向制御は,『strong mutual coupling』という現象に基づき,可変容量キャパシタの静電容量を制御することで変更している」(UMNOV氏)。アンテナ素子が多いことで,アンテナの形状も含めてパラメータの数が数百になり,それらの最適な値を選ぶのに高速サーバー機で数週間の計算が必要だったという。「今回の試作品に関する論文は,この研究所公開イベントが終わった今夜(2007年3月22日),投稿する予定だ」(UMNOV氏)。

 これまでビーム・フォーミングは「位相遅延(phase-delay)」という技術を用いることがほとんどだった。位相遅延は,各アンテナ素子へ送る電気信号の位相を制御することでビームの方向を変える技術である。「位相遅延はコストがアンテナ素子の数に比例してしまうため,アンテナ素子数の多い高利得のアンテナは高コストになる。今回の技術はアクティブなアンテナ素子の数が少なく,ずっと低コストで済む」(Intel社の説明員)。
 
 当面の想定用途は,無線LANやWiMAXを用いたメッシュ・ネットワークなど。このアンテナを用いると,各ノードにアンテナを1本ずつ設置するだけで,伝送経路のスイッチングが可能になるという。