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 神戸製鋼所はこのほど,引っ張り強度が780MPaに達する,世界最高強度のアルミニウム合金を開発した。高強度のポイントは,製造に急冷凝固プロセスの一つである「スプレイフォーミング法」を利用した点。現在は直径10×長さ100mm程度の試作品の段階だが,今後は量産製造技術を確立し,2008年度にはレーシングカーをはじめとする特殊車両や航空/宇宙機器などに使用される高付加価値部材として実用化を目指す。

 スプレイフォーミング法ではまず,アルミ合金を溶融する容器の底に小さな穴を開けておき,そこから出てくる溶湯に窒素ガスを吹き付けて微細な霧状の液滴とする。それが冷えて固まるまでに,下に準備したテーブルの上に降り積もらせて固めていく。溶湯をいったん霧状の液滴にして急冷することで偏析を抑制し,材料組織の微細化や均一化が図れるという。こうしたスプレイフォーミング法の特徴を生かし,今回は,アルミニウムに亜鉛やマグネシウム,銅といった高強度化に貢献する合金元素を高濃度に添加しながら,均一かつ微細な材料組織を実現した。従来の溶解/鋳造法では,凝固時の偏析や材料組織の粗大化といった問題から,これら合金元素の添加量には自ずと限界があった。

 これまでに実用化されているアルミ合金の最高強度は,スペースシャトルの外部燃料タンクに利用されている「Weldalite合金」の710MPaだった。従って,新開発のアルミ合金はそれを約1割上回ったことになる。さらに比強度で見れば,高強度チタン合金やマルエージング鋼と同等で,金属材料の中では最高クラス。それでいて加工性(延性)は,例えば破断伸びが14%と,Weldalite合金の約3倍,高強度チタン合金やマルエージング鋼の1.4倍と優れる。

 神戸製鋼所では,スプレイフォーミング法の基本技術を英オスプレイ社から技術導入した後,独自のアルミ合金製造技術として確立した。現在は,コベルコ科研がこの技術を利用して液晶パネルの配線膜向けにアルミ合金ターゲット材を生産している。