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 日立電線は,2007年3月27日~30日に青山学院大学相模原キャンパスで開催されている「第54回応用物理学関係連合講演会」において,高い再現性を維持した3インチのGaN基板を試作したと発表した(講演番号:27p-ZM-4)。現在製品化されているGaNは2インチ品。既に3インチ級のGaN基板は発表されているものの,「写真などのデータはなかった。写真や具体的なデータを発表したのは当社が初めてだと考えている」(同社)という。会場からの,「どの程度まで大型化できるのか」との質問に対し,「製造装置を整えれば,4インチ品も簡単にできると思っている」と答え,会場からはどよめきが生じた。

 GaN基板は次世代光ディスクで利用する青紫色半導体レーザや,パワー・アンプ回路や電源回路,モータ駆動回路でそれぞれ利用する半導体素子などで採用できるもの。こうした用途に利用すれば,特性の向上が見込める。ただしGaN基板の中には2インチで数十万円するものもあり,価格が高いことが普及を阻害する主な要因となっている。そのため,GaN基板の低コスト化が望まれており,基板メーカーや研究機関,大学などで低コスト化に向けた研究開発が活発に行われている。今回3インチと大口径化することで,コスト削減につながる可能性がある。

自然剥離を利用

 今回3インチ品を実現できたのは,GaN基板を作製するために利用する下地基板を再現性良く簡単に剥離する技術を開発したため。現在,GaN基板は,サファイアやGaAsなどの下地基板上にHVPE法を利用してGaNの厚膜を成長させ,その後で下地基板を取り除くものが多い。同社はGaN厚膜と下地基板との界面付近に微細な空間(ボイド)を発生させた「剥離犠牲層」を設けることで剥離を容易にした。この剥離犠牲層は機械的な強度が弱いため,HVPE成長後に温度を下げた際に生じる熱応力によってGaN厚膜と下地基板を自然に剥離できる。そのため再現性が高いという。今回の3インチ品では4回製造し,4回とも成功したと説明する。同社はこの剥離法を「VAS(void-assisted separation)法」と呼んでおり,既に2インチ品は開発済みである。3インチ品の場合,「2インチ品に比べて剥離の難易度は特に増していない」(同社)という。

 日立電線の手法以外にレーザやエッチング,研磨などを経て下地基板を取り除く方法がある。ただし,こうした方式では剥離の途中でGaNの厚膜が割れやすく,再現性を高めるのは難しかったという。下地基板がGaNとは異なる種類の材料で線膨張係数が違い,大きな熱応力が蓄積されるためである。

 今回のGaN基板は3.4インチのサファイア基板を下地基板とし,HVPE法を利用して厚さ600μmのGaN厚膜を1050℃で成長させた。成長時に利用したサファイア基板の領域は3.2インチ。1時間当たりの成長速度は140μm。転位密度はGaN基板内の場所によるものの,3×106~7×106cm-2程度である。製造装置を3インチ用に変更して600μmよりも厚く積むことで,転位密度を削減できると見込む。キャリアの移動度は約340~400cm2/Vsである。基板の反りは,2インチ品と同じ曲率半径であるものの,3インチと基板サイズが大きくなったことで大きくなったという。