PR

 NECは,カーボン・ナノチューブ溶液を塗布して作った電界効果トランジスタ(FET)を試作し,チャネル長を長くすることでソース-ドレイン電流のオン/オフ比(オン状態とオフ状態の電流比)が最大で107となったことを,「第54回応用物理学関係連合講演会」(2007年3月27~30日,青山学院大学 相模原キャンパスで開催)で発表した。同社はレーザ・アブレーション法で形成したカーボン・ナノチューブを有機溶媒に溶かしたものを塗布し,それを塗布して成膜した膜をFETのチャネルとして用いている(関連記事)。

 レーザ・アブレーション法で作製する場合,半導体カーボン・ナノチューブに金属カーボン・ナノチューブが混在している。このため,オン/オフ比が小さくなってしまうことが課題となっていた。今回,NECはチャネル長を長くすることで金属カーボン・ナノチューブがソース-ドレイン間を短絡させてしまう確率を低減した。カーボン・ナノチューブの長さが1~20μmのものを使用したところ,チャネル長を30μm以上に長くするとオン/オフ比が向上したという。チャネル長を100μmにしたところ,オン/オフ比は大きいもので107に達した。

 また,NECはカーボン・ナノチューブを塗布したFETについて,シミュレーションによって不良品の発生率を検証した。チャネル長50μm,チャネル幅が50μm,金属カーボン・ナノチューブと半導体カーボン・ナノチューブの存在比率が1対2という条件でカーボン・ナノチューブの長さを5~70μmの範囲で変化させ,ソース-ドレイン間が短絡または開放になってしまう不良品の発生する割合を調べた。その結果,カーボン・ナノチューブの長さを短くするほど不良品率が下がるという結果が得られた。例えばカーボン・ナノチューブの長さが10μmの場合,不良率は0.01%以下に抑えられる可能性があるという。

 カーボン・ナノチューブを塗布して形成したFETは,製造プロセスの温度が低いため,プラスチック基板を用いたフレキシブル・デバイスに用いることができると期待されている。NECはPEN(ポリエチレンナフタレート)を基板としてプロセス温度100℃でカーボン・ナノチューブによるFETを形成し,有機EL素子を駆動できることを確認したことも併せて発表した。移動度は100cm2/Vs以上を見積もることができ,この時のオン/オフ比は10~103だったとする。