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 米Mentor Graphics Corp.は,論理エミュレータの特許紛争から,米Quickturn Design Systems, Inc.株式の公開買付け(TOB)を1998年8月に宣言した。しかし,同年12月に米Cadence Design Systems, Inc.が突然Quickturn社を吸収合併することになった。その後,約1カ月間Mentor社は抵抗したが,最終的にQuickturn社はCadence社の傘下に収まることになった。EDA業界では珍しいTOBは失敗に終わった(関連記事)。このTOBの話を中心に,EDAテクノフェア'99(関連記事)で来日したMentor社President and CEOのWalden C. Rhines氏に話を聞いた(聞き手は小島郁太郎)。

問:Quickturn社買収に失敗したが,後味は。

Rhines氏:Quickturn社の買収に関しては,ベストの解ではなかったが,最悪解ではなかった。もちろん,ベストな解は当社がQuickturn社を買収することだ。次の解は,当社以外の企業,たとえば,米CadenceDesign Systems, Inc. や米Synopsys, Inc.に買収されること。買収した企業が,当社とクロス・ライセンス契約を結ぶ可能性が高いからだ。そして,最悪解は,Quickturn社が単独のまま残ることだ。今回,残念ながらベストな解ではなかったが,Quickturn社はCadence社に買収されたから,次善の解が得られた。

問:すでにCadence社側とクロス・ライセンスに関して話し合いをもったか。

Rhines氏:まだだ。裁判所との約束で,Cadence社は,Quickturn社の買収が完了しないうちは,クロス・ライセンスに関しては第3者と話せないことになっているからだ。

問:Mentor社は,論理エミュレータのビジネスを続けるのか。

Rhines氏:もちろんだ。当社は米国以外の地域では,論理エミュレータ市場でシェアはトップだ。1998年における論理エミュレータの当社の売上高は,前年比100%を超えている。今年(1999年)はそれ以上の成長が見込める。もちろん,論理エミュレータ・ビジネスはそれだけで黒字だ。

問:もし必要ならば,もう一度TOBをやってみたいか。

Rhines氏:恐らく,TOBに至るような事態はEDA業界では二度と起こらないだろう。今回は異常事態だった。そもそも当社がTOBを始めたのは,特許紛争にまつわる経費が無駄だと感じていたからだ。Mentor社とQuickturn社合せて,1200万米ドル/年の弁護士費用を負担している。特許の裁判では最終的には当社が勝利を収めると確信しているが,この費用負担を一刻も早く無くしたかった。それでTOBを始めた。EDAベンダは弁護士にカネを払うのではなく,研究開発に回したり,顧客のために使うべきだ。

問:1999年はどんなことに力を入れていくのか。

Rhines氏:キーワードは二つだ。すなわち,「Verification(検証)」と「DesignReuse(設計再利用)」である。検証には,機能,性能,消費電力,雑音その他の解析が含まれる。具体的なツールとしては,シミュレータ,論理エミュレータ,ハードウエア-ソフトウエア協調シミュレータ,レイアウト検証ツール,容量抽出ツール,テスト容易化ツールなどだ。検証ツールの売上げが,当社全体の製品売上げの50%を上回る。また,IPコアの売上げは同10%程度だ。

問:日本の顧客へのメッセージは。

Rhines氏:今が投資のときだ。日本の半導体メーカは1995年と1996年に大きな投資をして1997年にDRAMで大成功を収めた。1998年は難しい年だったが,新しい設計手法にのっとったツールを導入すれば,システムLSIのビジネスで成功を収められると確信している。