PR
図1 「Scorpion」について解説したThomas Sartorius氏(左)と,「Snapdragon」について解説したMark Schaffer氏(右)
図1 「Scorpion」について解説したThomas Sartorius氏(左)と,「Snapdragon」について解説したMark Schaffer氏(右)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 CPUコアのほかに浮動小数点演算およびSIMD演算を受け持つコアを集積する
図2 CPUコアのほかに浮動小数点演算およびSIMD演算を受け持つコアを集積する
[画像のクリックで拡大表示]
図3 Scorpionの演算パイプライン
図3 Scorpionの演算パイプライン
[画像のクリックで拡大表示]
図4 CIFサイズのMPEG-4の復号化/符号化処理は200MHz分で済む
図4 CIFサイズのMPEG-4の復号化/符号化処理は200MHz分で済む
[画像のクリックで拡大表示]
図5 アプリケーション・プロセサとベースバンド・プロセサのほか,多種多様な回路を統合した
図5 アプリケーション・プロセサとベースバンド・プロセサのほか,多種多様な回路を統合した
[画像のクリックで拡大表示]
図6 AXIアーキテクチャを基にしたクロスバ・スイッチ型バスは,すべてのスレーブに並行してアクセスできる
図6 AXIアーキテクチャを基にしたクロスバ・スイッチ型バスは,すべてのスレーブに並行してアクセスできる
[画像のクリックで拡大表示]
図7 Scorpionのほかに,画像処理や音声処理などのコプロセサを集積する
図7 Scorpionのほかに,画像処理や音声処理などのコプロセサを集積する
[画像のクリックで拡大表示]

 米QUALCOMM Inc.は「Microprocessor Forum 2007」(米国カリフォルニア州サンノゼ,2007年5月21~23日)で,同社が開発中の携帯電話機向けアプリケーション・プロセサ「Scorpion」と,Scorpionを集積する1パッケージの携帯電話機プラットフォーム「Snapdragon」の詳細を発表した(図1)。

演算性能は2100MIPS

 Scorpionは「500mW以下の消費電力で2000MIPS(Dhrystone換算)以上の演算性能を達成することを目標にして,2003年に開発に着手した」(QUALCOMM社 Principal ArchitectのThomas Sartorius氏)もの。英ARM Ltd.の命令セット・アーキテクチャ「ARMv7」互換の,独自開発したアプリケーション・プロセサである。スーパースカラ型のCPUコアのほか,浮動小数点演算およびSIMD演算を受け持つout-of-order型実行のマルチメディア・エンジン「VeNum」,256Kバイトの2次キャッシュ,DMAコントローラなどを集積し,これらを128ビットのAXIアーキテクチャのバスで接続する(図2)。製造プロセスは65nm世代で,動作周波数は1GHz。2100MIPS(Dhrystone換算)の演算性能を持ち,1命令当たりの消費電力を0.14mWに抑えたとする。

 パイプライン段数は,整数演算が10段または12段,ロード/ストアが13段である。VeNumを利用する浮動小数点演算のパイプライン段数は合計で23段となる(図3)。条件分岐の履歴を格納するテーブルや分岐先のアドレスを格納するキャッシュを備えることで,条件分岐時のペナルティを1サイクルに抑えた。VeNumは,ARM社の拡張命令セット・アーキテクチャであるベクタ浮動小数点演算命令「VFPv3」とSIMD型命令の「NEON」を実装した回路である。128ビットのデータ・パスを持つ11段の演算パイプラインと,ロード/ストアのパイプラインを備える。CPUコアが備える1次キャッシュは命令およびデータ用にそれぞれ32Kバイトである。

 低消費電力化のために,さまざまな方策を採用した。リーク電流を抑制するCMOSプロセスの採用,細粒度のクロック・ゲーティング,動作周波数や駆動電圧のドメインごとの動的な変更などを実施したという。また,シンクロナスDRAMへのアクセス時の消費電力を抑えるために,メモリ・チップを積層して1パッケージに収める。CIFサイズ(352×288画素)で30フレーム/秒のMPEG-4の映像を復号化する場合,400MHzのARM11では復号化処理だけで演算能力のほとんどを使い切ってしまうが,Scorpionでは復号化と符号化を同時に実行しても約800MHz分の演算能力が残るとした(図4)。また,グラフィックスの描画性能はARM11の約35倍になるとした。

1パッケージに3チップを収める

 Snapdragonは,アプリケーション・プロセサとベースバンド処理回路を統合した携帯電話機向けプラットフォームである。Scorpionのほか,600MHzで動作するDSP,グラフィックス処理回路,CDMAなどの移動体通信ネットワークや無線LAN,Bluetooth,GPSなどのベースバンド回路,ディスプレイ・コントローラなどを備える(図5)。「デジタル回路,アナログ回路,そしてメモリの3チップを1パッケージに収める」(QUALCOMM社 Senior Staff Engineer/ArchitectのMark Schaffer氏)という。なお,ここで示した図は高級機種向けであり,一部の機能に限定した低価格機種向けSnapdragonも開発する。Snapdragonプラットフォームに基づく製品は2007年後半に発表する予定。

 Snapdragon内の各要素の接続には,Scorpionやメモリ,コプロセサの一部などの間で大量のデータをやり取りするための広帯域のクロスバ・スイッチ型バスと,汎用入出力端子やUARTといった外部入出力端子に信号を送るためのAHBアーキテクチャの周辺回路用バスを併用する。広帯域のバスは,AXIアーキテクチャを基にしたもので,スレーブごとに調停回路を備える(図6)。

 マルチメディア処理のために,DSPのほか,OpenGL ESに対応するグラフィックス・プロセサ,映像の符号化/復号化処理を行うプロセサ,画像処理プロセサ,音声処理プロセサなどを混載する(図7)。例えばゲームであれば,Scorpionでの演算で得たテクスチャと形状の情報をグラフィックス・プロセサに渡し,グラフィックス・プロセサが描画した画像をディスプレイ・プロセサが表示するという形態になるという。