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規定課題部門優勝者の京都大学大学院 情報学研究科 花岡俊行氏。
規定課題部門優勝者の京都大学大学院 情報学研究科 花岡俊行氏。
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自由課題部門優勝者の千葉大学大学院 工学研究科 人工システム科学専攻の柘植 宗範氏。
自由課題部門優勝者の千葉大学大学院 工学研究科 人工システム科学専攻の柘植 宗範氏。
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規定課題部門の問題。
規定課題部門の問題。
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副賞であるPS3のプレゼンターは,Cellのアーキテクトの一人であるSCEの山崎剛氏。
副賞であるPS3のプレゼンターは,Cellのアーキテクトの一人であるSCEの山崎剛氏。
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もう一つの副賞の東芝の液晶テレビ「REGZA」のプレゼンターは,東芝セミコンダクター社 システムLSI事業部の福田悦生氏。こちらは47型と大型のため,目録での贈呈となった。
もう一つの副賞の東芝の液晶テレビ「REGZA」のプレゼンターは,東芝セミコンダクター社 システムLSI事業部の福田悦生氏。こちらは47型と大型のため,目録での贈呈となった。
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表彰が行われたSACSIS2007会場において,上位入賞者による発表が行われた。
表彰が行われたSACSIS2007会場において,上位入賞者による発表が行われた。
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 情報処理学会の研究会らは合同で,マイクロプロセサ「Cell」のプログラミング・スキルを競うコンテスト「Cellスピードチャレンジ2007」を開催した。2007年2月~3月にかけて予選および決勝が実施され,2007年5月に開催された「先進的計算基盤システムシンポジウム(SACSIS2007)」において上位入賞者の表彰および発表が行われた。

 Cellスピードチャレンジは,Cellを用いて並列プログラミングの速度や優劣を競うもので,今回,初めて開催されるコンテストである(Tech-On!関連記事)。学生向けの「規定課題部門」と,企業の技術者も参加できる「自由課題部門」の二つから成る。同コンテンストの実行委員長である東京大学 先端科学技術研究センター 准教授の中村宏氏が,研究においてCellを利用する中でコンテストの可能性を着想し,Cellの開発元である東芝,ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE),日本IBMとの協賛という形で実施にこぎつけた。「来年も開催するかどうかは未定だが,出場チームも多く,中止する理由もないため,恐らく開催する」(中村氏)という。

 コンテストの内容は,規定課題部門では単精度浮動小数点数のソーティング処理の速度を競った。具体的には,ソーティング対象となる要素が与えられ,各要素はキーと可変個のデータ(いずれも単精度浮動小数点)から成る。データの最大値か,あるいはデータの2乗和からキーを算出し,このキーの大小によってソーティングを行うという幾分複雑な処理である。自由課題部門ではCellを利用した各種ツールや実験結果などを審査員が審査した。

 コンテストの参加者は,オンライン上でCellの開発キットを利用できる東芝のサービス「Cellオンライン」の利用資格が与えられ,このサービス上でプログラミングを行った。SCEや東芝が協賛していることもあり,各部門の優勝者には情報処理学会のコンピュータサイエンス領域奨励賞に加えて,SCEから「プレイステーション3(PS3)」が,東芝から47型の液晶テレビ「REGZA」などが授与された。

「Cellは挑戦しがいのあるアーキテクチャ」

 規定課題部門には,44チームが参加し,このうち27チームが予選用のソース・コードを提出し,25チームが予選を通過した。予選で5問,決勝で10問の獲得ポイントを加算し,その合計点によって順位を決定した。決勝では正答を導き出せたチームは25チーム中,6チームだけとなり「Cellのような高度なアーキテクチャの場合,1カ月間もプログラミングを行っても答えを出せないこともある。非常に挑戦しがいのあるアーキテクチャ」(実行委員長の東京大学の中村氏)という。

 規定課題部門の優勝者は,京都大学大学院 情報学研究科の花岡俊行氏である。インデックスに対してバイトニック・ソートを行い,これに加えてSPEへのデータ転送の遅延を隠蔽するためにDMAによるダブル・バッファリングを行った。CellはSPEのローカル・ストアのメモリ容量が256Kバイトと少ないため,処理を高速に行うには演算と並行して,DMAによってローカル・ストアの内容を書き換えておく必要がある。ソーティング処理時には,SPEのSIMD命令を用いた。なお,同部門の2位は,東京大学大学院 情報理工学系研究科のLuong D. Hung氏,3位は大阪府立高等専門学校のプログラミング研究会のグループである。SIMD命令やDMAによるダブル・バッファリングといった工夫は,優勝者以外の参加者も施していた。

 自由課題部門には,21チームが参加し,このうち8チームからのレポートを受理した。優勝者は,千葉大学大学院 工学研究科 人工システム科学専攻のグループ(柘植 宗範氏,白木 厚司氏ら)である。計算機合成ホログラム(CGH:computer generated hologram)の演算にCellを用い,2.083GHz動作のAthlon XPと比べて約29倍の高速化を実現したという。ホログラムの各画素の演算を,そのまま7個のSPE,およびSPE内部の4ウエイのSIMD命令によって並列化した。同部門2位は,九州工業大学大学院 生命体工学研究科 脳情報専攻の五十嵐 潤氏。Cellによって,Hodgkin-Huxley型の神経回路網のシミュレーションを行った。

 なお,規定課題部門の入賞者のプログラムは,GPL version 2に従って2007年6月上旬に,説明資料とともに公開される予定である。