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図1 スラリー製造装置。写真は容器の内径が80mmで,回転ホイールの最大周速が50m/sのもの
図1 スラリー製造装置。写真は容器の内径が80mmで,回転ホイールの最大周速が50m/sのもの
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図2 開発した製造装置の構造
図2 開発した製造装置の構造
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図3 流動性を制御して高品質な電極板を作製可能
図3 流動性を制御して高品質な電極板を作製可能
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図4 均一に電極材料が分散
図4 均一に電極材料が分散
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 プライミクスは,連続プロセスが可能なLiイオン2次電池の電極材スラリー用製造装置を開発し,電池量産工場への納入に向けて事業展開を進めていることを明らかにした。最大の特徴は,電極材料に用いる活物質や導電材,溶媒,バインダーを短時間に均一に分散できることである。

 これまで,電極材のスラリーの製造にはバッチ式の混練装置が使われていた。今回の製造装置は,バッチ式のものに比べて品質安定性に優れたスラリーを作れる上,大量生産時の製造コストを大幅に削減できるとする。実用化に向けて開発が進んでいるハイブリッド車用のLiイオン2次電池など,安全性を非常に重視しながらも大量生産が必要な分野での利用を目指す。

 今回の製造装置は,同社が1997年に開発した高速旋回型ミキサ「T.K.フィルミックス」を基にしている(図1)。円筒状の容器の中に,小さな穴が多数開いている円筒状ホイールを入れ,それを高速で回転させる構造である(図2)。容器の下から予備混合した電極材料を一定流速で供給すると,電極材料が遠心力で容器内壁とホイールの間に集まり,ホイールの回転によって生じるせん断力(ずり応力)によって高速に混ざり合う。こうして均一に分散したスラリーを容器上部から連続的に取り出せる。混ぜる時間(分散時間)はわずか30秒ほど。これまでのバッチ式の混練装置は3時間ほど掛かっていた。

 開発した装置は電極材料を均一に分散できる上,スラリーの流動性もホイールの周速や分散時間といったパラメータで制御できる。そのため,Cu合金やAl合金などの極板にスラリーをスリットダイ・コーティングで塗布するのに適した流動性に設定することが可能だ(図3)。具体的には,スラリーのいわゆる降伏点がほとんどない状態にできる。これにより,膜厚や塗布部分の寸法にバラつきが少ない高品質な電極板を作製できるとしている。

均一に混ざって導電性アップ

 実際,LiMn2O4(マンガン酸リチウム)とカーボンブラック,PVdFを使って電極材スラリーを製造した結果,均一に電極材料が分散することを確認している(図4)。しかも,開発した装置内の円筒状ホイールの回転速度が高いほど,活物質の上にカーボンブラックなどがより均一に分散して電気抵抗が下がるという。具体的には,分散時間30秒で周速が30m/sの場合に20.8Ω・m,同40m/sの場合に18.4Ω・m,同50m/sの場合に16.4Ω・mと電気抵抗は下がり導電性が高まった。これに対して,従来の混練機で3時間混ぜた電極材は30.6Ω・mと電気抵抗が高かった。

 流動性についても,円筒状ホイールの周速が高いほど粘度(B型粘度)が下がる。具体的には,分散時間30秒で周速30m/sの場合に9000mPa・s,同40m/sの場合に7100 mPa・s,同50m/sの場合に3200 mPa・sとなった。従来の混練機で3時間混ぜた場合に3800 mPa・sとなり,開発した装置はわずか30秒で同等の粘度を実現できるという。

コンタミの混入も防ぐ

 開発した装置は,電極材を混ぜ合わせる容器の内径が数百mm以内と従来の混練機に比べて大幅に小さくできる。このため,容器と高速回転するホイールをSiC製に比較的低価格で置き換えられる。これにより,電極材料への金属粉などのコンタミの混入を防ぎやすくなり,電池の電圧低下や内部短絡の発生を削減できるとしている。従来の混練機は容積400Lといった大型の容器を使う場合が多く,容器やかくはん用の部品を金属以外に置き換えるのは難しかった。

 プライミクスは,車載用Liイオン2次電池の製造工程などで開発した装置が使われることを想定している。現在研究開発が盛んな正極材のLiFePO4(リン酸鉄リチウム)を導電材やバインダーと均一に分散させるのにも適しているという。