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株式会社アクアビット
代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー 田中 栄

 私は常日頃、多くの企業が、自分の業界の範囲に固執した発想をしていると感じ、残念に思っています。実際、これまでのマーケットリサーチの多くが、特定の業界や商品、消費者といったいわゆる縦割りで行われてきました。しかしながら、今やそういった縦割りの中だけで業界を予測し、経営戦略を立てることは難しくなっています。

 例えば、2011年にはテレビのアナログ放送が完全に廃止され、デジタル放送に一本化されます。ここに向けて、今までのアナログ・テレビとはまったく異なる、ネットワークにつながり双方向性を獲得したデジタル・テレビが広く一般に普及していくでしょう。そうなれば、従来のビジネスモデルが成立しなくなるのは明白です。そのとき、テレビ局のライバルはテレビ局ではなく、NTTのような通信事業者、あるいはGoogleのようなインターネット・サービス企業になっていかもしれない。テレビの敵はテレビではなく、パソコンになっているかもしれないのです。携帯電話業界や自動車業界などに関しても同様のことが言えるでしょう。

 今や業界内だけを見渡して、競合相手のことだけを考えるということは無意味なのです。

 デジタル分野、ネットワーク分野では、特にこのようなビジネスの融合が顕著で、業界という枠組みが、完全に意味を失いつつあります。それを、私たちは「デジタル・コンバージェンス」と呼んでいます。コンバージェンスとは、英語で「集中・収束・収斂(しゅうれん)」という意味ですが、今後、さまざまな産業が、「デジタル」と「ネットワーク」という共通のキーワードを共有するようになることで、ひとつの世界に収斂していくことでしょう。デジタル化、ネットワーク化は、業界におけるこれまでの競争ルールを変える「パラダイムシフト」なのです。

 こうした考え方に基づき、私たちは『未来予測レポート デジタル産業2007-2020』というレポートをまとめました。この中では、ハードウエア、ソフトウエア、ネットワークを1つの産業としてとらえています。私たちの思いは、読者自身が属する以外の業界、自分の知らない分野について知ってもらいたいということです。そうすることで、今まで意識もしていなかった分野でビジネスチャンスを見つけることができるかも知れません。世の中全体を見渡すことによって、社会変化と業界再編との関連性、異なる業界同士の関連性など個々のつながりが見えてくるからです。こうした視点をもつことが、企業が経営戦略を立案する上で極めて重要になっているのだと思うのです。

 ここからは、前出のレポートで詳説させていただいたことの一端をご披露させていただきたいと思います。ただ、その前に、まずは「デジタル産業とはどういうものか」について説明しておかなければなりません。

 レポートでは、デジタル産業に含まれるものを、「デジタル化されたコンテンツやサービスを扱っていること」かつ「双方向であること」と定義しました。デジタル産業を既存のアナログな産業のカテゴリーで見てみると、放送、通信、エレクトロニクスなど様々な分野が含まれますが、これらを1つの産業として捉え、新たに機器、ネットワーク、コンテンツ&サービス、ソリューション&ソフトウエア、ストレージ&メディアという5つのカテゴリーに分類しました。さらに、デジタル・ネットワーク産業を、4つのマーケット・プレイスに分けています。各マーケット・プレイスで中心となるのが、家庭における「デジタル・テレビ」、自動車における「カーナビゲーション」、職場における「パソコン」、モバイル環境における「携帯電話」です。


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 その全体を見渡したとき最も重要なのは、冒頭でも触れたように、既存の産業がデジタル化、ネットワーク化の進展によってコンバージェンスを起すということです。カーナビの例でそれを説明してみましょう。今後、カーナビは企業が顧客に対して独自のサービスを提供していくための重要な役割を担っていくようになります。その契機となるのが、今後5~10年かけて起こるカーナビのネットワーク化でしょう。実際、すでに放送のデジタル化によって、自動車内でもワンセグやデジタル・チューナを使い、カーナビでテレビ放送が見られるようになってきています。今後は自動車向けのコンテンツ配信も始まっていくはずです。これが自動車業界におけるデジタル・コンバージェンスなのです。

 次回は、未来予測の前提となる社会情勢の変化について解説します。それ以降、デジタル・テレビ、カーナビ、パソコン、携帯電話という4つのデバイスを中心に、今後、デジタル・コンバージェンスがどのように起こっていくかについて、話を進めていく予定です。

本稿は、日経BP社が発行した『未来予測レポート デジタル産業2007-2020』(田中栄・西和彦著)に収録したDVDの要約と同レポートの本文中に掲載した図版の一部によって構成したものです。『未来予測レポート デジタル産業2007-2020』の詳細については、こちらをご覧下さい。

著者プロフィール

田中栄
1966年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。株式会社CSK入社。社長室企画部にて、故・大川功会長の独自の経営理論や経営哲学を学ぶ。1993年、草創期のマイクロソフト株式会社に入社。WordおよびOfficeのMarketing責任者として「一太郎」とワープロ戦争を繰り広げ、No.1ワープロの地位を確立。1998年春よりビジネスプランナーとしてマイクロソフト日本法人全体の事業戦略・計画立案を統括。2002年12月、独立のため同社を退社。株式会社アクアビットを設立。