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株式会社アクアビット
代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー 田中 栄

 私たちは、『未来予測レポート デジタル産業2007-2020』をまとめるにあたり、マーケット・プレイスを家庭、自動車、職場、モバイル環境の4つに分け、それぞれで中心となる「デジタル・テレビ」「カーナビゲーション」「パソコン」「携帯電話」が、デジタル・コンバージェンスによって、どう変化していくかを予測しました。前回は、このうちデジタル・テレビとパソコンについて概略をご紹介しました。今回は、携帯電話、カーナビゲーションに触れてみたいと思います。

携帯電話

 モバイル環境におけるキーデバイスは携帯電話です。この携帯電話の世界では、グローバル化が本格的に進むことになるでしょう。携帯電話市場はすでに成熟の域に達しており、ユーザーニーズの多様化は、今後さらに進んでいくと予想できます。しかしながら現在は、商品開発が通信事業者(キャリア)主導で進められています。日本の携帯電話機メーカーは、多様化するユーザーニーズに対応しようとしても、自由に商品開発ができるわけではありません。今後、フィンランドNokia社、米Motorola社、韓国Samsung Electronics社といった海外メーカーが台頭してくることが予想され、携帯電話機分野での業界勢力図は大きく変わってく可能性が高そうです。


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 海外メーカーだけでなく「MVNO(mobile virtual network operator)」と呼ばれる新規参入者についても注目する必要があります。MVNOとは、日本語で「仮想移動体通信事業者」と訳します。現在のようにNTTドコモやKDDIなどの第一種電気通信事業を行う携帯電話会社がすべてを取り仕切るのではなく、携帯電話会社からその通信設備の一部を借り受けてサービスを提供するMVNOがどんどん現れ、多様化するユーザーニーズに応えていくようになるでしょう。一方、「iPhone」を発表した米Apple社のような強力なブランド力を持った企業も携帯電話業界に進出してきます。

 さらに今後は、携帯電話網にも目を向ける必要があります。既存の携帯電話網の高速化も進んでいきますが、新たにインターネットをベースとしたVoIPを利用する携帯電話が広く一般化してくると予想できます。現在、携帯電話において最も懸念されている点は、現行の第3世代から第4世代への移行に伴う機能向上のための開発コストです。その一方で、いずれは通話料を定額制に移行させなければならない。実際、ソフトバンクモバイルでは、一部定額制を始めており、完全定額制も目前となっています。そのため、各携帯電話会社は、NTTの回線を経由しない、IPを使った独自携帯電話網の構築に着手し始めています。それが、固まってくるのは、2009年~2010年ころでしょう。

 こうした流れを受け、携帯電話会社は現在のビジネスモデルを全面的に見直す必要性に迫られます。実際、ソフトバンクモバイルが実践していることは、既存のビジネスモデルを破壊することです。同社がNTTドコモやKDDIと決定的に違う点は、携帯電話の通話/通信料以外にも、収益を上げることができるサービスを数多く持っているということです。彼らは、広告、オークション、動画配信といったサービスを、Yahoo!を中心に幅広く展開しています。こうした強みを後ろ盾に、完全定額制への移行を虎視眈々と狙っているソフトバンクモバイルに対し、NTTグループやKDDIがどのような対抗策を取っていくのか注目しています。

 さらに、第一種電気通信事業にとっては、今後、携帯電話と固定電話をどのように融合させていくかが大きな課題となっていくでしょう。携帯電話と固定電話のセットで、もしくはそれらを融合させて、どのような新サービスを提供し、ユーザーの囲い込みを行っていくかについても注視していく必要があるでしょう。


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自動車

 自動車というマーケット・プレイスで中心となるデバイスはカーナビです。現在、カーナビはスタンドアローンですが、今後、携帯電話料金の定額化か実現し、ブロードバンドによる高速無線遠距離通信が可能になれば、カーナビが「ネットワーク機器」となることは疑う余地がありません。自動車という閉じられた空間の中で情報を得るための中心的なデバイスへと変化していくのです。この結果、カーナビは、カーコンピュータへと進化していくことになります。

 これから自動車メーカーにとって重要になるのは、経営資源である顧客とどれだけ長く深い関係を構築し、そこから収益を得ていくかということでしょう。そのときに大きな役割を果たすのが、カーコンピュータなのです。これが普及する2010年ころには、自動車メーカーの経営戦略も大きく変わっているはずです。

 現在、政府はITSの普及を中長期的に進めていますが、カーコンピュータと連動することで、全く新しいサービスが出てくる可能性があります。例えば、広告代理店によって地図を中心としたプロモーションが行われるようになるかもしれません。こうした、さまざまな業種を巻き込んだ新たなビジネスがそこから生まれてくるのです。

 いわゆる「ワンセグ」によって、自動車に特化したテレビ番組作りも行われるようになるでしょう。液晶ディスプレイの低価格化が進み、やがては助手席や後部座席にもディスプレイが搭載されるようになります。そして、ディスプレイが増えればそれだけ、新しいサービスやビジネスが生まれる余地も大きくなるのです。


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本稿は、日経BP社が発行した『未来予測レポート デジタル産業2007-2020』(田中栄・西和彦著)に収録したDVDの要約と同レポートの本文中に掲載した図版の一部によって構成したものです。『未来予測レポート デジタル産業2007-2020』の詳細については、こちらをご覧下さい。

著者プロフィール

田中栄
1966年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。株式会社CSK入社。社長室企画部にて、故・大川功会長の独自の経営理論や経営哲学を学ぶ。1993年、草創期のマイクロソフト株式会社に入社。WordおよびOfficeのMarketing責任者として「一太郎」とワープロ戦争を繰り広げ、No.1ワープロの地位を確立。1998年春よりビジネスプランナーとしてマイクロソフト日本法人全体の事業戦略・計画立案を統括。2002年12月、独立のため同社を退社。株式会社アクアビットを設立。