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 ベンチャー企業のブイシンク(東京都渋谷区)は,1999年5月23日に音楽データの配信/販売実験を開始する。コンテンツ・サーバにあらかじめ蓄積した約2000曲の音楽データをユーザの要求に応じてコンテンツ受信端末「ミュージックポッド」に配信し,MD(ミニ・ディスク)に記録する仕組みである。コンテンツ・サーバは当初,ブイシンクの社内に設置する。ミュージックポッドはまず東京都品川区にあるレコード店「フオノMMP3号店」に1台設置し,ゲーム・センタや書店,コンビニエンス・ストアなどへ順次設置を進めて合計30台に増やす。曲数も6000曲まで増やす予定。1曲当たりの価格は,歌詞カード付きで250円程度,歌詞カードなしで150円程度である。実験は1999年11月末に終了する。

データの記録は1曲当たり約30秒

 ユーザは,まずミュージックポッドのタッチ・パネルを操作して好みの曲を選ぶ。試聴も可能である。ユーザが所定の金額を投入すると,課金情報がサーバ側に送信され,課金処理を行なう。課金の確認後,コンテンツ・サーバからミュージックポッドに音楽データを送信する。

 送信するのはCD(コンパクト・ディスク)の音源をATRAC方式で符号化したコンテンツである。ミュージックポッドでは,受信した音楽データを8倍速でMDに記録する。一度記録したコンテンツを再度コピーできないように,通常のMDレコーダと同じくSCMS(serial copy management system)のビットを付与する。データの送信には,NTTのATM(asynchronous transfer mode)伝送サービス「ATMシェアリンク」を利用する。下り方向の最大データ転送速度が3Mビット/秒で上り方向の最大データ転送速度は1Mビット/秒である。音楽データのダウンロードから記録まで合わせて1曲当たり約30秒かかる。

小型メモリ・カードにも対応の準備

 将来的には,フラッシュEEPROMを使った小型メモリ・カードにも,ダウンロードしたコンテンツを記録できるようにするという。「SDMI(Secure Digital Music Initiative)で音楽データの著作権保護方式が固まってきたら,ミュージックポッドに小型メモリ・カード向けのスロットを用意する。スロットを設けるためのスペースもすでに確保してある。サーバで配信用コンテンツに変換して送信する」(ブイシンク 代表取締役の藤井克磨氏)。最大3スロット用意できるため,たとえば「メモリースティック」と「SmartMedia」,「MultiMediaCard」のスロットをそれぞれ備えることも可能という。

ヒット曲の配信に遠い道のり

 実験開始は当初予定より半年以上も遅れた。「音楽コンテンツの原盤権者との話し合いに時間がかかったため」(ブイシンク 専務取締役の井部孝也氏)という。今回配信するコンテンツは旧譜とインディーズである。たとえば,「いい日旅立ち」(山口百恵)や「大都会」(クリスタルキング)など。音楽コンテンツを提供するのは,シンコー・ミュージックや渡辺音楽出版といった音楽出版社や音楽プロダクションである。「今回は原盤権の所在が明確な音楽出版社にコンテンツを提供してもらった。レコード会社とは現在話し合いを進めている」(井部氏)。

 レコード会社は,音楽出版社や音楽プロダクションから権利の委託・譲渡を受けてCDなどを制作している。このとき,ネットワーク配信する場合の権利関係を明記しない場合が多いため,原盤権の所在が曖昧という問題がある。この問題に決着をつけないと,レコード会社はコンテンツの配信に踏み出せないという背景がある。国内でヒット曲の配信がスタートするには,まだ時間がかかりそうだ。