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 オランダPhilips Display Components B.V.は,同社が開発した平面CRT「Cybertube」の製造拠点を2000年に4カ所に拡大することを明らかにした。現在はオランダのアーヘン工場で製造しているだけだが,2000年に米国の工場とフランスの工場,中国の工場を加え,4拠点体制に移行する。欧州などで平面でワイド型のテレビ受像機のニーズが急速に高まっていることに対応する。

 エレクトロニクスショー’99で来日した同社Display Components,Region Europe & Global Cluster TVTのMarketing ManagerであるRonald Tabaksblat氏と,同Global Marketing Communications ManagerのPeter Halmans氏に聞いた。



――「Cybertube」の特徴は。

Tabaksblat氏 おもに二つある。第1に映像をみたとき,物理的に管面が平坦なだけでなく,光学的にも平らにみえること。第2に,スピーカの振動などでシャドウ・マスクが揺れて画像が乱れることを防ぐ工夫をしたことだ。

――具体的にはどのようにしたのか。

Tabaksblat氏 一般に,平坦化をねらってCRTの前面ガラスをほぼ平板にすると,光学的な屈折などによって映像の中央部が凹んでみえてしまう。さらに機械的な強度を保つためにガラスを厚くする必要があり,CRTが重くなってしまう。現行の球面状の前面ガラスの四隅にガラスを足して平坦化する方法もあるが,この場合は画面中央部が出っ張ってみえる。もちろん,ガラスを足した分だけ,重くなる。そこで,CRTの前面は平坦に,前面ガラスの内部はきわめて小さい曲率として,強度を保ちながら光学的にも平坦に見えるように屈折などを考慮して設計した。

――シャドウ・マスクは。

Tabaksblat氏 既存のテレビ受像機の円弧状に曲がったシャドウ・マスクをほぼそのまま用いる。このため,耐振性としては既存のCRT並みに高い。振動源となるスピーカなども,配置を気にせずテレビを設計できる。

 しかし,このままでは問題がある。これまでのCRTでは,シャドウ・マスクとCRT内面の蛍光体膜までの距離は一定である。しかしCybertubeの場合は,CRT内面が小さい曲率,シャドウ・マスクは大きい曲率なので,画面中央部で最も両者が接近し,コーナー部分で最も離れることになる。すなわち,RGBの電子銃からそれぞれ出た電子線が,中央部では狙い通りにシャドウ・マスクを通過して蛍光体に当たるのに対し,コーナー部ではシャドウ・マスク通過後に必要以上に広がってズレてしまう。そこで「Gun Pitch Modulation」と呼ぶ技術を導入した。2組の偏向コイルを使ってRGBの電子銃の間隔を電子的に制御する。中央部ではRGBの電子線の間隔が広いままシャドウ・マスクに向かうようにし,コーナー部を走査するときは狭くする。

――平面CRTの市場をどうみているか。

Tabaksblat氏 日本ではきわめてポピュラーになっているが,欧州ではまさにいま,盛り上がりつつある段階だ。2000年ころから急速に伸びると考えている。これに向けて,年間で200万本のCybertubeの製造能力を確保すべく,設備の拡充に動いている。中国でも平面CRTの需要が急速に高まっている。

――製造拠点は。

Tabaksblat氏 現在,オランダのアーヘン工場で32インチ型(ワイド型)の製造を始めたところだ。2000年内に,米国,フランス,中国の工場でも生産を立ち上げる。Philipsが製造している全CRT(パソコン用ディスプレイを含む)のうち,2000年には約1割が平面管になるだろう。

――平面テレビとしてはPDPや液晶テレビなどが注目を集めているが。

Tabaksblat氏 今回のエレクトロニクスショーでも,すばらしいディスプレイが数多く展示されている。しかし,現在のテレビ受像機をみれば,CRTはフラットパネル・ディスプレイに比べものにならないほど巨大な市場であり,まだまだ重要な位置を占めつづけると考えている。基本技術の登場から100年を経過しても,今回の平面化のように,まだ進化しつづけているという事実もある。

――Philips社のフラットパネル・ディスプレイ戦略は。

Tabaksblat氏 大型でPDP,比較的小型の領域で液晶,米国などでは大型投射型など,一般によく語られているようだが,まだ「これだ」と決めるには早すぎると考えている。

――日本メーカの一部は,それでもいま路線を決めて,一気に先行しようとしているようだが。

Tabaksblat氏 いま選ぶか,もう少し待つか。むずかしい問題だ。いま決めてもいいが,選択を間違ったときのペナルティは想像を絶するほど大きい。それなら待ったほうがいいのかといえば,そうでもない。少しでもタイミングを逸して「待ち過ぎ」をしてしまったら,膨大なコストを払わないと市場参入できなくなる。(聞き手=原田 衛)