今回登場したのは,このRPC-2対応のDVD-ROM装置を,あたかもRPC-1であるかのように変えてしまう改造ファームウエアである。本来は変えられないはずのRPC-2対応品の地域コードの書き換えに成功してしまった。
具体的には,1999年11月の上旬にハンガリー在住の技術者Fekete Istvan氏が,パイオニア製で高性能品ではシェアの高い10倍速DVD-ROM装置「DVD-114」で,OEM先のメーカなどが設定した地域コードの書き換えに成功したことに端を発する。DVD-ROM装置内のフラッシュEEPROMに格納したファームウエアなどを改造した。インターネット上では, RPC-2のハッキングに成功した初めての事例といわれている。続いてパイオニア製の「DVD-A03」や「DVD-103S」,「DVD-113」などで,RPC設定用ジャンパ・ピンを抜いてRPC-1からRPC-2への切り替えが起こっても,元のRPC-1に戻すためのソフトウエア・ツールなども公開した。
11月中旬には,パイオニアの米国子会社が「同氏が開発したツール「Region Code Eraser」は,パイオニアが著作権を保有するコードを含んでおり,著作権などを侵害している」と同氏に警告のメールを送付したが,同氏は反論したもよう。そして12月上旬,同氏は地域コード設定がない状態に加工済みの10倍速装置用のファームウエアなどを公開した。
パイオニアは現在のところ「公式なコメントは用意していない」という。1999年12月現在はまだRPC-1対応品も出荷できるため,こうしたツールの存在はそれほど大きなインパクトがない。しかし2000年1月1日以降,RPC-2対応品以外は出荷できなくなると,こうしたツールの影響力は,増大していく。RPC-2のセキュリティ強化が求められれば,DVD-ROM装置メーカはファームウエアの格納に通常のフラッシュEEPROMが使えなくなる(書き換えを防ぐため)ケースも考えられる。
RPCの仕組みはもともと,米国の映画産業(ハリウッド)が,既存の映画のビジネス慣習をDVD-Videoにも盛り込めるように提案したもの。すなわち米国の映画館でまず封切りし,その後時期を空けて有料放送やパッケージ・ビデオ化し,時間をズラしながら世界に展開するという方法である。この考え方は,DVDの発売当初から一部のマニア・ユーザには「DVDにはせっかく多国語を入れられるのに,これでは意味が薄まる」と不評だった。こうしたこともあって,RPCはハッカーの格好の標的になったもようだ。