米Analog Devices,Inc.は,ハイエンド32ビット浮動小数点DSP「ADSP-TS001」を発売した(リリース文)。同社が1998年に発表した「TigerSHARC」アーキテクチャに基づく初のDSPである。次世代移動体通信システム(IMT-2000)やADSL(asymmetric digital subscriber line)などの高速通信インフラの基地局に向ける。米TI社(Texas Instruments Inc.)のVLIW型ハイエンドDSP「TMS320C6xxxシリーズ」の対抗馬となる。
ADSP-TS001の特徴は,32ビット浮動小数点だけではなく,8ビット/16ビットの固定小数点も扱えること。このため,応用ごとに適したデータ精度を使い分けることが可能だ。たとえば,音声コーデック(符号化/復号化)処理時は16ビット,エコー・キャンセラ処理時は32ビット,画像処理には8 ビットといった具合だ。
「スタティック・スーパースカラ」と呼ぶ独自の並列処理アーキテクチャを採用し,1クロック当たり最大4命令を同時実行できる。この結果,16ビット固定小数点の積和(MAC)演算のピーク処理性能は1200MMACS(million multiply and accumulate per second)。32ビット浮動小数点の場合は900MMACSで,同社従来品に対し50%の性能向上となった。
プログラム開発環境はアセンブラ言語とC言語の両方をサポートする。Cコンパイラの効率は70%という。「完全にインターロックされた128の汎用レジスタによるプログラムの開発しやすさと,命令パッキングでNOPを不要にしたことによるメモリの効率利用が強み」(同社 DSP Program ManagerのKevin Leary氏)。
集積した主な回路ブロックは,6MビットのSRAM,固定小数点演算コア,浮動小数点演算コア,双方向リンク・ポート×4,汎用レジスタ×128,など。これらを128ビット幅の内部バスでつないでいる。
サンプル出荷時期は2000年3月を予定。ソフトウエア開発ツールも合わせて提供する。