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既存の8ミリ方式のテープにディジタル記録できるカメラ一体型VTR
既存の8ミリ方式のテープにディジタル記録できるカメラ一体型VTR
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 ソニーは,既存の8ミリ方式のビデオ・テープにディジタル記録できるカメラ一体型VTRを1999年3月1日に発売する。同社が単独で新たに決めた「デジタルエイト方式」(Digital 8)を採用した。

 発売するのは2機種である。3.5型の液晶モニタを装備する「DCR-TRV310K」と,2.5型の液晶モニタを使う「同110K」だ。価格はそれぞれ,18万5000円と14万8000円に抑えた。筐体や光学系など,多くの部品を既存のアナログ記録の機種から流用したためとみられる。「DV方式のカメラ一体型VTRは,安いものでも実売価格が15万円~16万円程度。これに対して,デジタルエイト方式の製品は,当初から実売価格が12万円程度になり,近いうちに10万円を切るかもしれない。これは大きな脅威になる」(DV方式のカメラ一体型VTRメーカ)。

 記録媒体もDV方式に比べて安い。今回のデジタルエイト方式では,既存のハイエイト方式のテープをそのまま使うことができる。記録時間が120分と表示されているテープにディジタル記録した場合,半分の60分しか記録できないものの,120分の媒体は3本で1000円を切るくらいの実売価格になっている。「塗布媒体でも蒸着媒体でも画質は変わらない。当然,低価格な塗布媒体が主流になろう」(ソニー)。一方,DV方式のテープの実売価格はその約3倍と高どまっている。

 ソニーも,DV方式に対応したディジタル記録のカメラ一体型VTRを積極的に販売しているメーカの1社である。それにもかかわらず,デジタルエイト方式の製品発売に踏み切ったのは,「DV方式とデジタルエイト方式は明確に差異化できる」と社内で結論づけたためという。「DV方式は,小型で高機能な点を前面に押し出していく。これに対して,今回のデジタルエイト方式は低価格で,さらに既存のアナログ記録の8ミリビデオ・テープを再生できることから,8ミリビデオ・ユーザの買い換え需要をねらえる」(ソニー)。さらに,海外市場も重視する。国内では,カメラ一体型VTRに占めるDV方式の比率が急速に高まっているものの,1998年は米国で約5%,欧州でも約10%程度にとどまる。「DV方式のカメラ一体型VTRはまだ価格が高いため」(同社)。同社は今回のデジタルエイト方式で,低価格を武器に,8ミリ方式のカメラ一体型VTRが売れ続けている海外市場を温存させる戦略だ。

 現在,デジタルエイト方式を用いたVTRを開発するメーカは,ソニー以外にない。1998年11月~12月ころに各メーカに採用を働きかけ始めたばかりだからだという。

 デジタルエイト方式や,今回発表した製品の主な特徴は次の通りである。

  • 映像データの圧縮方式や,オーディオ・データの方式などは,DV方式と同じである。
  • ディジタル記録したテープを,既存のアナログ記録の機種に挿入して再生した場合,映像,音声とも雑音になるだけで,不具合は発生しない。
  • DV方式のデータを,8ミリ方式のテープに納めるために新たな物理フォーマットを開発した。
  • ディジタル記録/再生時はヘッドの回転数を4500rpmとし,アナログ再生時は1800rpmに変えられるモータを採用した。
  • ハイエイト方式の再生帯域は0~12MHz。これに対してデジタルエイト方式の再生帯域は0~21.7MHzと広い。2倍近い帯域を,同じ記録再生ヘッドでカバーするために,ヘッド素子などを工夫した。このヘッドの開発に2年ほどを費やした。
  • IEEE1394端子を備え,アナログ記録したテープを再生したときの映像も,DV方式のデータとして出力することができる。
  • LP(長時間記録)モードは備えない。
  • 同じテープ内にアナログ記録部とディジタル記録部が並存した場合などに,記録方式を自動検出して切り替える仕組みを搭載した。具体的には,アナログ記録時のトラッキング信号や,ディジタル記録時のシステム・データと呼ぶ信号を監視することで検出する。
  • アナログとディジタルの再生方式切り替えには,5秒程度を要する。回転ヘッドの回転数の調整に時間がかかるため。
  • 今回の機種に搭載したLSIなどは,ほとんどが新たに開発したもの。ただし,主に既存のDV方式用のLSIの回路などを活用し,アナログ8ミリ方式の処理など一部の回路を付け足しただけなので,開発費は抑えられた。
  • メイン・ボードは8層のプリント配線基板である。これまでのアナログ機種は4層で済んでいた。パッケージがCSPのLSIは,4個使っている。

デジタルエイト方式の仕様
DV方式 デジタルエイト方式(Digital8) アナログ8ミリ方式(ハイエイト)
輝度信号 記録方式 ディジタル アナログ
水平解像度 約500本 約400本
標本化周波数 13.5MHz
量子化ビット数 8ビット
色信号 記録方式 ディジタル(色差信号) アナログ(低域変換)
再生色帯域 約1.5MHz 約0.5MHz
標本化周波数 3.375MHz
量子化ビット数 R,G,B各8ビット
映像データ転送速度 25Mビット/秒
音声記録方式 16ビット/12ビットPCM方式 アナログFM変調方式
テープ幅 6.35mm 8mm
カセットの外形寸法 66mm×48mm×12.2mm 95mm×62.5mm×15mm
記録再生ヘッドの方式 回転ヘッドによるヘリカル・スキャン方式
トラック・ピッチ 10μm 16.34μm 20.5μm
テープ送り速度 18.812mm/秒 28.666mm/秒 14.345mm/秒