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 シャープは,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.を特許侵害で提訴した目的として「当社の知的財産権の価値を認めてもらいたいため」(広報部)とコメントした(Tech-On!関連記事)。「Samsung社の製品の輸入・販売を差し止めて液晶テレビのシェア向上を図るといった意図はない。Samsung社とは,当社の知的財産権の価値を認めてもらった形でのライセンス契約を締結したいと考えている」(広報部)。

 今回,シャープが販売差し止めの対象とした製品には,Samsung社の液晶モジュールを搭載する他メーカーの製品や,Samsung社の製品の中でも韓国S-LCD Corp.が製造した液晶モジュールおよび同モジュールを搭載する製品は含まれていない。

 これに対してSamsung社は,徹底的に抗戦する姿勢をみせている。「使用していない特許については法的対応を取る。加えて,Samsung社が保有する液晶ディスプレイの特許について,シャープに逆提訴することを検討中だ」(広報部)。Samsung社は,同社が「使用していない」とする特許の内訳や,法的対応の内容といった詳細は明らかにしていない。今後は,互いに訴訟手続きを進めつつ,特許のクロス・ライセンスの条件について両社の駆け引きが続きそうだ。

 シャープが今回の訴状で提示した特許は,それぞれどれほど強力であり,シャープのどのような戦略を反映しているのか。以下,一つの指標として,それぞれの特許の引用関係を参考に考察を試みた。図1~図5に示す特許の引用相関図は,SBIインテクストラ シニア・コンサルタントの川崎昌義氏の調査による。

図1 第4649383号特許の引用相関図
図1 第4649383号特許の引用相関図 (画像のクリックで拡大)

 第4649383号特許は,コントラストの優れた画像表示を実現する液晶パネルの駆動方法に関する特許である。Samsung社を含む幅広い特許に引用されており,液晶ディスプレイにおける重要な特許の一つであることが分かる。特許の出願日は1983年12月29日,登録日は1987年3月10日である。特許は既に失効しており,シャープは同特許について過去製品における特許侵害の賠償を求めるとみられる。

図2 第5760855号特許の引用相関図
図2 第5760855号特許の引用相関図 (画像のクリックで拡大)

 第5760855号特許は,対向電極と接続する静電気対策用の配線を備えた液晶パネルに関する特許である。Samsung社は3件の特許について同特許を引用しており,Samsung社がこの特許を重要なものと位置づけていることが分かる。特許の出願日は1996年9月30日,登録日は1998年6月2日である。

図3 第6052162号特許の引用相関図
図3 第6052162号特許の引用相関図 (画像のクリックで拡大)

 第6052162号特許は,画素内の光利用効率を高める電極配置構造を持つ液晶パネルに関する特許である。シャープは,同特許を引用する関連特許を多数登録しており,同特許を中心に特許ポートフォリオを構築していたことが分かる。加えて,第4649383号特許と同様に,Samsung社を含む幅広い企業に引用されている。特許の出願日は1996年8月12日,登録日は2000年4月18日である。ちなみに同特許の出願者の一人として,現社長である片山幹雄氏の名前が挙がっている。

図4 第7027024号特許の引用相関図
図4 第7027024号特許の引用相関図 (画像のクリックで拡大)

 残り二つの特許は,いずれも成立が2006年と新しいため,今のところ両特許を引用する特許はない。成立日が古い先の三つの特許と比べ,これらの特許は最近の製品の差異化に直結する技術を示すとみられる。Samsung社が「使用していない」と主張するのも,この両特許である可能性が高そうだ。第7027024号特許は,表示品質を高める液晶パネル駆動装置に関する特許である。特許の出願日は2004年6月30日,登録日は2006年4月11日である。

図5 第7057689号特許の引用相関図
図5 第7057689号特許の引用相関図 (画像のクリックで拡大)

 第7057689号特許は,位相差補償によって広視野角を実現する光学フィルムを備えた液晶パネルに関する特許である。特許の出願日は2002年11月8日,登録日は2006年6月6日である。

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<お詫びと訂正> 当初の記事で「登録日」「成立日」とあったのは,それぞれ「出願日」「登録日」の誤りです。お詫びして訂正します。