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大幅な機構改革などを発表するソニー代表取締役社長の出井伸之氏(左)と,同代表取締役会長の大賀典雄氏(右)
大幅な機構改革などを発表するソニー代表取締役社長の出井伸之氏(左)と,同代表取締役会長の大賀典雄氏(右)
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 ソニーは,1999年3月9日朝7時30分から開催した臨時取締役会で,エレクトロニクス事業の再編やグループの上場3社の完全子会社化などを骨子とする組織改革を決めたと発表した。

 まず,1999年4月1日付で発令するエレクトロニクス事業の再編では,これまで10あったカンパニーのうち9を,三つの「ネットワークカンパニー」と呼ぶ単位にくくり直す。業務用放送機器などを担当してきたブロードキャスト&プロフェッショナルシステムカンパニーはそのまま残す。従来のカンパニーの下に位置する「ディビジョン・カンパニー」という組織のくくりも今回から新たに導入する。つまり,同社のカンパニー制は,ネットワークカンパニー,カンパニー,ディビジョン・カンパニーの3層構造になる。

SCEを一つの「核」に

 三つのネットワークカンパニーとは,(1)テレビ受像機や据置型VTR,オーディオ機器,ディスプレイ・デバイスなどを手がける売上規模最大の「ホームネットワークカンパニー」,(2)パソコンや電話機,携帯型機器などを担当する「パーソナルITネットワークカンパニー」,(3)半導体や記録媒体,電池,部品などのデバイスを担当する「コアテクノロジー&ネットワークカンパニー」である。さらに今回,これらのネットワークカンパニーと肩を並べるコア事業として,家庭用ゲーム機のプレイステーション事業を担当するソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)を位置付けた。

 SCEは先日,次世代プレイステーションに使うLSIを製造する最先端の半導体工場に1200億円を投じると発表したばかりである(関連記事リンク集)。「SCEはソニー・グループのテクノロジ・ドライバとなっていき,そして今後はビジネス・モデル構築の先端を進む『ビジネス・ドライバ』としての位置付けも強くなっていくだろう。良い意味で,ソニー・グループのビジネスの触媒になれると考えている」(4月1日付でSCE代表取締役社長に就任する久多良木健氏=現代表取締役副社長)。

ネットワーク時代に向け猛進

 ソニーが新たに「エレクトロニクス事業のコア」と位置付けたホームネットワークカンパニーやパーソナルITネットワークカンパニーは,いずれも家庭のネットワーク化に向けてまい進することになる。たとえばホームネットワークカンパニーは,「来るべきネットワーク時代へ向けて,ディジタル・テレビを中心に据えた独自のネットワーク型ビジネス・モデルを構築する」というのがミッションである。パーソナルITカンパニーは「ノート・パソコンと電話機がいっしょになっていくのはほぼ確実である」(出井氏)といった意向を受けて,パソコン「VAIO」や新たな携帯型情報機器などで家庭の情報化に取り組んでいく。次世代プレイステーションを,家庭に向けたディジタル・コンテンツ流通のプラットフォームにしようという動きも垣間見える。

 加えて今回新たに,グループ本社直轄の事業として,ソニーコミュニケーションネットワークが運営するインターネット・サービス「So- net」や,CS衛星放送,BS衛星放送など担当する「デジタルネットワークソリューション(DNS)」を設置した。将来のネットワーク関連事業に向けて,全世界にわたる事業計画の立案や,ビジネス・モデルの構築を担当するという。映画や音楽を始めとするディジタル・コンテンツのネットワーク配信を近未来に行なうことを明らかにしたほか,ネットワークを使った保険やファイナンス事業といったサービスの提供も視野に入れる。

SCEを実質100%子会社に

 ソニーは2000年1月1日をメドに,ソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ),ソニーケミカル,ソニー・プレシジョン・テクノロジーの上場3社を100%子会社にすることも決めた。SMEJを完全子会社化したことで,まずネットワークによる音楽配信事業などを「ソニーと十分に協力して進めていける態勢を整えていく」(出井氏)という。さらにSMEの完全子会社化によって,SCEも実質の完全子会社にする。