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 人工網膜を開発中の東北大学 大学院工学研究科 教授の小柳光正氏の研究グループは,眼球に埋め込んだ人工網膜用LSIに外部から電力をワイヤレスで供給するシステムを試作した。同グループはこの成果を現在開催中の半導体に関する国際会議「2007 International Conference on Solid State Devices and Materials(SSDM)」(つくば国際会議センター)で発表した(発表番号:P-11-1)。

 今回発表したシステムは,電磁誘導型のワイヤレス給電を使う。小型の電池を備え,眼鏡のレンズに埋め込んだ1次コイルから,眼球のレンズとなる水晶体に埋め込んだ2次コイルへ電磁誘導で電力を送電する。今回の主な開発部分は2次コイルと,2次コイルが受けた交流電流を直流に整流するためのショットキー・ダイオードの2点である。

 このうち,2次コイルは銅(Cu)めっきを用いたダマシン・プロセスで製造した。コイルの直径は水晶体の大きさに合わせて1cm,配線幅は1mmとした。SiO2を絶縁層としてCu配線を2回巻いている。巻き数が2と少ないのは「今回は,2次コイル側で想定する4.5Vという誘導起電力を得る上でどれぐらいの巻き数が必要かを調べるのが目的」(小柳研究室)であるため。最終的には20巻き前後を想定しているという。

周波数が高いと眼球が発熱

 今回の試作の結果,1次コイルを50巻き,2次コイルを20巻きとした場合には,約100MHzを中心に3M~300MHzの交流周波数で4.5Vの電圧を得られることが分かったという。ただし,周波数の選択には注意すべきことが多いという。「周波数が100MHzを超え,GHzに近づくと電磁波が眼球を加熱してしまう。一方,3M~4MHzという低い周波数では電波法の規制の問題とぶつかる。RFIDタグ(無線タグ)で用いている13.56MHzが現実的な選択肢かもしれない」(同研究室)。

 LSIを含めた眼球内回路の消費電力をいかに減らすかも,給電システムを考える際の重要なポイントであるという。「眼球の細胞は温度が3℃上がるとダメージを受ける。このため,消費電力は50mW以下にして安全を確保する予定」(同)。

 小柳氏の研究グループは2005年に東北大学の医学部の研究者とも協力して,ウサギの視神経の末端に人工的な電気刺激を加えると,実際の網膜が光を受けた時と同様な波形の信号が神経を伝わることを確認済みであるという。

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