仏Air Liquide S.A.の取締役会長兼CEOであるBenoît Potier氏は,2007年10月11日に記者会見し,同グループの経営戦略・目標を語った。その中で同氏は,企業の成長要因を組織自体の発展/自己成長(Organic Development)と合併(Consolidation)の2つに分け,前者をより重視する姿勢を明らかにした。
Air Liquideは,産業・医療用ガスとそれらの製造装置の販売を手がけている。子会社である日本エア・リキードは,産業・医療ガス業界における売上シェアで国内第3位の位置を占める。
「他社とは違うDNA」
会見では,日本エア・リキードの今後のM&A戦略に質問が集中した。例えば「業界1位の大陽日酸,同2位のエア・ウォーターはいずれもM&Aによって業績を伸ばして来たが,日本エア・リキードは今後どのようにM&Aを行っていく予定か」といった質問である。Potier氏はそれに対し「Air Liquideは2社とは異なるタイプのDNAを持っている。歩んできた歴史や市場におけるポジショニングも違う」と答えた。
Air Liquideはグループ全体で過去30年間,年平均8~10%の成長(売上高と一株あたりの利益)を続けてきたという。Potier氏はそのうちの80%を自己成長,20%を合併によるものだとする。この「80&20%戦略」を今後も維持し,技術・研究分野など同グループの強みを生かした(合併に頼りすぎない)成長を続けていくとした。市場における「ポジショニング」の違いに関しては,Air Liquideは今後,伝統的なビジネスよりもハイテク・ビジネスの市場に力を注いでいくつもりだとした。
さらにPotier氏は,アメリカとヨーロッパ,日本などにおいて反トラスト法の執行機関がAir Liquideの行動に注目しているため「大型の合併は当面ないだろう。小型や中型の合併はありえる。ただし,それらは日本だけでなく世界中で起こりうることだ」と語った。
大規模工業とヘルスケアの市場に期待
Potier氏は,Air Liquide グループが今後5年間で大きな成長を期待する市場として次の2つを挙げる。第1に,石油精製や天然ガス,化学,金属といった大規模工業(Large Industry)で,年平均で8~15%の成長を目指すとする。企業の環境対策が進むなか,クリーン燃料の製造過程で脱硫のために使用される水素などの需要増を見込んでいるという。さらに,アジア地域でアウトソーシングへの流れが加速するなか,金属や化学の分野でも,ステンレス鋼やポリウレタンの製造過程で必要とされるガス(アルゴンや一酸化炭素など)への需要が高まると予想する。
第2に,高齢化が進む日本で需要の高まりが期待される医療用ガスの市場が伸びるという。こちらは年平均で8~12%の成長を目指すという。麻酔ガスとして使用される亜酸化窒素や,呼吸器系統に疾患を持つ患者が使用する酸素などの需要増を見込んでいるという。