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 ソフトウエアの受託開発を手掛けるアルゴ21は,自動車の組み込みソフトウエア開発に向けて,形式手法(formal methods)の一種であるプロセス代数「CSP(Communicating Sequential Process)」関連のスキル強化に着手した。同社の組み込みソフトウエア開発部門に所属する約150人の技術者のうち,まずは1割に相当する15人を選抜してCSPによるモデリング・スキルを習得させた。将来的には,自動車の電子制御ユニット(ECU)向けソフトウエアの受託開発においてCSPを適用していく計画という。

 自動車業界では,現在,同分野向けの機能安全(functional safety)規格である「ISO 26262」の策定が進んでいる。策定後,同規格においてある一定以上の安全度水準(SIL)の認証を取得するために,CSPを始めとする形式手法の利用が必要になると見込まれている(関連記事01)。こうした背景があり,ここ数年,自動車業界ではモデル検査など形式手法への注目が高まっている。

 アルゴ21はエンタープライズ系の受託開発で名前を知られているが,1980年代から組み込みソフトウエアの受託開発も手掛けている。名古屋支社では自動車のECU向けソフトウエアを手掛けており,自動車分野の顧客とやり取りがあった。この中から形式手法のスキルへのニーズの高まりを察知し,今回の取り組み強化に至ったという。

キッカケは子会社の教育研修事業

 形式手法には,今回のCSPやCCSのようなプロセス代数型の形式仕様記述言語のほかにも,VDMのようなモデル規範型の形式仕様記述言語(関連記事02同03),SPINやSMV,Uppaalのようなモデル検査などさまざまな手法がある(関連記事04)。今回,アルゴ21がCSPを選択したのは,教育研修を手掛ける子会社「アルゴエデュケーションサービス(AES)」における,ある取り組みがキッカケであったという。

 AESでは,親会社のアルゴ21やグループ外の企業に向けてソフトウエア関連の教育・研修メニューを販売している。組み込みソフトウエア関連の研修メニューを充実させようと企画を探していた2007年4月ころ,あるCSP技術のコンサルタントからCSPの教育研修メニューの提案を受けた。AESがこの企画案について本社の組み込み技術者に相談したところ,ちょうどアルゴ21本体でも形式手法への問題意識を持ち始めていた時期であったため,まずはアルゴ21の技術者向けにCSPの教育研修を施してみることになった,というわけだ。アルゴ21としては顧客の求めるスキルが獲得でき,AESとしては教育研修メニューの手応え・反応を確かめられるなど双方にメリットがあった。

 アルゴ21で組み込み関連事業を統括する同社 取締役 兼 執行役員 エンベデットシステム事業本部長の森 陽三氏はCSPを選んだ理由について「外部からの提案という理由もあるが,並行システムとしてモデル化できることが多い制御系の組み込みソフトウエアでは,CSPのようなプロセス代数は相性のいい仕様記述言語だと判断した」と語る。「CSPを何にでも適用できるとは思っていない。当時は当社には形式手法の知識がほとんどなく,まずは最低限,1つの手法・言語をキチンと習得することを考えた。それ以外の言語や手法については,CSPを身につけた後で順次,幅を広げていけばいいというスタンス」(同氏)という。

 なお,CSPに代表されるプロセス代数では,並行動作するプロセスについて,その状態遷移やプロセス間の通信を特殊な代数記法で表現しモデル化する。これらモデルをさまざまな代数操作によって変形したり,プロセス代数向けのモデル検査によって,その特性を検証したりする。

全国からプロジェクトの精鋭を選抜

 アルゴ21はCSPへの取り組みの第1弾として…(次のページへ