米Magma Design Automation, Inc.は,最適化機能付き自動レイアウト・ツール「Blast Fusion」の新製品戦略(Phase IIと呼ぶ)を発表した(リリース文)。戦略は二つに分けられる。一つはRTL記述を直接入力できるように論理合成機能を加える。これで,Blast Fusion はRTLからGDS?までカバーするようになる。独自製品によるカバー範囲では,米Cadence Design Systems, Inc.と並ぶ(EDA Online関連記事1)。
また,米Synopsys,Inc.は配線ツールを正式発表していないことから,Synopsys社より広くなる(EDA Online関連記事2)。RTL入力機能については,顧客への出荷が完了してから,名称などの詳細を正式発表するという。製品出荷は,2000年第2四半期の予定。リリース文には,Fujitsu Semiconductor GroupのKiminori Fujisaku氏(general manager of Worldwide System LSI Technologies (WWSLT) )がコメントを寄せている。
二つ目の戦略は,クロストーク雑音など,いわゆるシグナル・インテグリティの問題が発生しないレイアウトを作成する機能「Silicon Integrity」を加える。こちらは2000年第1四半期末までに出荷の予定。
今回,来日したMagma社President and CEOのRajeev Madhavan氏とVice President of MarketingのBob Smith氏に,phase?の詳細について都内で話を聞いた。
問 RTLを直接入力できるようにする理由を知りたい。Synopsys社の論理合成ツールの出力がうまくBlast Fusion入力できないためか。
Magma社 RTL入力機能の有無にかかわらず,Blast FusionはDesign Compilerの出力を何の問題もなく受け入れられる。ただし,別の製品を使うことで,余計な時間がかかってしまう。また,仮想配線長に基づく最適化処理を行なっても,良い結果が得られるとは限らない。
当社の方法では,Blast Fusionで実績を上げている 「SuperCell(論理機能が固定で,遅延時間が選択できる仮想マクロセル)」に,RTL記述を直接置き換えてしまう(EDA Online関連記事3)。冗長論理の削除といった論理最適化処理も,SuperCellのネットワークに対して行なう。仮想配線長に基づく最適化処理が要らないため,処理時間も短い。Blast FusionがRTL入力機能をサポートすれば,Design CompilerやCadences社のAmbitをわざわざ用意する必要はなくなる。
問 Design CompilerやAmbitをフロント・エンドに使った場合と,Blast FusionのRTL入力機能を使った場合で生成される結果に差はでるのか。
Magma社 現在,結果の差については評価中であるが,劇的な変化はないと思う。Blast FusionはもともとDesign CompilerやAmbitの処理結果を一度破棄してから,作業に入っていたからだ。処理結果よりも,処理時間(ランタイム)が短くなることの方が,顧客にとってメリットになる。
問 Silicon Integrityでは具体的にどのような問題に対応できるのか。
Magma社 クロストーク雑音や信号線のエレクトロマイグレーション,EMS(electro magnetic susceptibility:外来雑音による誤動作)に耐性のあるマスク・レイアウトを出力できる「Silicon Integrity v1.2」は2000年第1四半期末に始める。配線幅や配線位置を調整したり,バッファを挿入するなどして,自動的に耐性のある結果を出力する。これらの機能は,現在のBlast Fusionにも含まれているが,整備した上で正式発表することにした。2000年第2四半期にベータ版を出荷予定の時期製品では,IRドロップなども扱う予定である。詳しくは,後日正式発表する。
問 Silicon Integrityで提供する機能は,Cadence社も昨年11月に発表しているが(EDA Online関連記事4),違いはあるか。
Magma社 競合の製品では,大規模な設計になると,配線幅を調整しながら配線経路を見い出すことが難しくなる。そのため,バッファの挿入で対応することになり,最適な結果を出す可能性が下がる。Blast Fusionが内蔵する配線ツールは,配線幅を変えながら経路を見つけるものとしては,市販品のなかで群を抜いて大規模な設計を扱えると自負している。Blast Fusionは,合成処理も含めて,階層をもたない(フラットな)400万ゲートの回路を処理できる。
問 マスク・レイアウト設計では,最近OPC(optical proximity correction)や位相シフト技術への対応が話題になっている(EDA Online関連記事5)。Blast Fusionはどうするのか。
Magma社 当然,これらについても考えている。時期は未定だが,正式に発表する日が来るだろう。