PR

 富士ゼロックス 総合研究所(ホームページ)は、光技術を使った高速バス実装技術を開発した。マイクロプロセサとメモリとの間の高速信号伝送(高速バス)などに適用する考えで、従来の電気配線の置き換えをねらう。このほかバックプレーン・バスや自動車向けLANなどにも使える。すでに1998年末の時点で原理検証を終えたという。現在は実際の電子機器への適用を検討している段階で、「2000年後半には試作品を公開できるだろう」(同社 主任研究員の舟田雅夫氏)としている。

拡散フィルムを使いコストを削減

 開発した光技術は、同社では「光シートバス技術」と呼ぶ。光の伝搬路には、プラスチック光ファイバに使うPMMA材料をシート状に加工した導波路を使う。このエッジから光を入れて、反対側のエッジで光を検出する。

 多ビットの信号を伝送する場合には、そのビット数分だけPMMA導波路を積層する。ただし光信号は、電気信よりも高速伝送が可能である。このため、いくつかの並列信号を直列信号に束ねて送ることができる。この手法を使えば、66MHz、64ビットのバスは、528MHz、8ビットに変換して伝送することが可能になる。すなわちPMMA導波路は八つ積層すればよい。

メモリ・バスへの適用をねらった光シートバス技術
メモリ・バスへの適用をねらった光シートバス技術 (画像のクリックで拡大)

 製造コストを下げるために、導波路のエッジに拡散フィルムを取り付けた。このフィルムで入射光の光路を広げて、反対側のエッジのどの部分でも受信できるようにする。「光学技術を使った伝送システムの実用化に向けた課題は、受信部の光軸を合わせる実装に大きなコストがかかること。拡散フィルムを使えば、電気コネクタとほぼ同等の±200μm程度の取り付け誤差を許容できるようになる。このため現時点でも電気配線より安くできる。具体的には、電気配線を10とすると、光シートバス技術は9.5程度だ。ただし、こうした単純なコスト比較だけでなく、電気配線を使った高速バス設計が難しくなっていることを考慮すれば、光シート・バス技術の優位性はさらに高まるだろう」(舟田氏)と見ている。

 伝送実験の結果は以下の通りである。伝送速度が500Mビット/秒の信号を40mm伝送した場合、ビット誤り率10-10を保証する最小受光感度は約-21dBm、100Mビット/秒の信号を40m伝送した場合は、約-25dBmだった。

光源にはVCSELを採用

 光源には、面発光型半導体レーザ(VCSEL:vertical cavity serface emitting lasers)のアレイ素子を使う。現在時点では米国メーカが製造した素子を使って開発を進めているが、近い将来現在同研究所で開発を進めている素子に切り替える計画だ。
 同研究所で開発を進めているVCSELは、選択酸化型と呼ばれるもの。現在製造されているVCSELの製造方式であるインプラ型に比べると、応答速度が速い、光出力のバラつきを抑えることができる、しきい値電流が小さい、などのメリットがある。


(画像のクリックで拡大)

 現状では、発振波長780nmで単一横モード発振時の光出力が3.4mWの素子を試作している。光出力のバラつきは±10%以内、しきい値電流は0.3mA~0.5mAである。価格に関しては、1素子当たり5ドル以下を目指している。

 富士ゼロックスでVCSELの開発に取り組んだ理由は、超高速で、低価格なレーザ・ビーム・プリンタを実現するためだ。目標は、VCSELを12×1200=14400個集積したアレイ素子の開発である。これを使えば、ポリゴン・ミラーなどの光学系を使わないレーザ・プリンタを実現できる。現状では、12×120=1440個を集積したアレイ素子まで製造できるという。なおこの素子は、1999年秋に開催されたComdexの基調講演で公開した。下の写真は、VCSELを1440個集積したアレイ素子である。(山下)