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試作した8×8のマトリクス・スイッチ素子 外形寸法は40mm×5mm。スイッチング時間は77nsと短い。
試作した8×8のマトリクス・スイッチ素子 外形寸法は40mm×5mm。スイッチング時間は77nsと短い。
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 富士ゼロックス(ホームページ)は、データ伝送速度が1Gビット/秒を超える通信技術に使う光スイッチの低電圧化/低コスト化を実現する基本技術を開発した。駆動電圧、価格ともに、現状よりも一桁下げることが可能という。

 現在LANなどのスイッチには、半導体で実現したいわゆる電子スイッチが使われている。しかし今後、データ伝送速度が高まると、電子スイッチでは対応しきれなくなる。「インピーダンス不整合による信号劣化や、伝搬損失が大きくなるといった理由から、1波当たりでは1.25Gビット/秒程度が電子スイッチと光スイッチの境になるだろう。これより高速なケースについては、電子スイッチでは並列処理してスループットを高めることで対応できる。しかし処理が複雑になるため10Gビット/秒程度が限界」(富士ゼロックス 環境システム開発部 光システム技術開発室の梨本恵一氏)と見ている。

 今回同社が試作したのは、1入力、2出力のいわゆるY分岐スイッチである。このスイッチで7.5Vという低い電圧でオン/オフできることを確認した。今後は、2.5Gビット/秒の信号を 4波多重して伝送する、いわゆるWDMによる10Gビット/秒の伝送実験に取り組む計画だ。

 駆動電圧に関しては、最適化を進めることで駆動電圧を5Vまで下げることができると見ている。サンプル出荷は2000年の半ばに始める計画である。その際には、Y分岐スイッチを組み合わせた8×8、もしくは16×16の光スイッチとして出荷する。8×8の光スイッチの目標性能として、駆動電圧は5V、消費電力は50mW、価格は5万円を掲げている。

導波路材料にPLZTを採用

 従来の光スイッチは、駆動電圧が高いこと、消費電力が大きいこと、価格が高いこと、という三つの課題を抱えていた。たとえば光導波路材料にLiNbO3(リチウムナイオベート)を使う光スイッチでは、駆動電圧は約50V、価格は数十万円だった。

 こうした課題を克服するには、電気光学係数が大きい材料を使えばよい。たとえばPLZT((Pb、La)(Zr、Ti)O3)の電気光学係数は103と、LiNbO3の17よりも1桁大きい。しかしこの材料は単結晶のエピタキシャル膜を形成するのが難しく、従来の導波路では光伝搬損失が大きいという課題を抱えていた。過去の発表では14dB/cmが最低値で、実用化するにはこの値よりも2桁下げる必要があった。

 今回同社は、PLZT導波路の形成方法を工夫することなどで、伝搬損失を0.7dB/cmまで低減した。開発した形成方法は固相エピタキシャル成長法である。ゾルゲル法に近い。従来はRFスパッタリング法を使っていた。

 開発した成膜法では、まず基板(NbドープSrTiO3)の上に金属アルコキシド溶液を垂らし、スピンコート法で、基板をコーティングする。その後300℃~400℃でプレアニーリングした後に、光導波路構造を形成するためにウエット法でエッチングする。この次に650℃~800℃でアニーリングすることで、結晶の核が成長し始め、エピタキシャル薄膜が得られる。

 さらに今回は、光導波路構造も工夫した。単純に基板の上にPLZT膜を形成しただけの光導波路では、光が基板に染み出すため、伝搬損失が大きくなる。そこで組成を若干変えたPLZT膜をバッファ層として挟むことで、光が基板に染み出すことを防いだ。

きっかけはポリゴン・ミラーの置き換え

 なお富士ゼロックスで光スイッチの開発に取り組み始めた理由は、レーザ・ビーム・プリンタのポリゴン・ミラーを光導波路を使ったビーム・リフレクタに置き換えることにある。これが実現できれば、稼働部を削減でき、コストを低減できる可能性があるという。