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携帯電話機,パソコン,プリンタなどの周辺機器,AV機器,自動車,産業機器・・・。
さまざまな機器への搭載が見込まれている近距離の無線データ通信技術「Bluetooth」。
仕様の標準化作業はほぼ完了し,機器メーカはBluetooth対応機器の開発に力を入れている。
ここにきて,Bluetooth対応機器の開発は試作段階ではなく,量産出荷に向けた製品開発の段階に移った。
Bluetoothの開発と量産の段階で欠かせない測定器の品そろえも豊富になっている。
しかし,Bluetooth対応機器の製品化は一筋縄にはいかない。
これまでの無線通信機器にはない,Bluetooth固有の問題があるためだ。 そのツボを抑えることこそが,低コストに製品化するためのカギを握る。


図1:Bluetoothインタフェース対応機器の開発が本格化,測定器も登場
測定器メーカは,Bluetoothインタフェースの物理仕様をテストできる測定器や上位プロトコルを解析するためのアナライザを発売している。今後は,Bluetooth SIGの標準化時期に合わせてプロファイル・アナライザを,機器メーカの本格的な量産時期に合わせて量産ライン向け測定器を発売する。写真は上から,1999年12月開催の開発者向け会議「Bluetooth Developers Conference」の会場風景。米Intel Corp.のBluetoothインタフェース開発用ボード。スウェーデンEricsson社の開発用ボード。独Rohde & Shwarz GmbHの信号発生器とスペクトラム・アナライザ。(図:本誌,写真:独Rohde & Shwarz社の製品は同社,ほかは本誌)

近距離の無線データ通信インタフェースBluetoothに対応した製品を,機器メーカが市場に出荷するために必要な環境が,いよいよ整い出した。Bluetoothに対応した製品の出荷は,2000年中に始まる見込みである。まずは,Bluetoothの標準化を推進してきたスウェーデンEricsson社や東芝などが対応製品を発売する。2001年春には,NTTドコモ(NTT移動通信網)がサービスを開始するW-CDMA方式の携帯電話機に搭載予定である。機器メーカがBluetooth対応機器を試作機としてではなく,製品として開発する段階にきた。

これまでは製品化できなかった

機器メーカが,Bluetooth対応製品の設計・開発に着手できるようになったのは,Bluetoothの技術仕様(Bluetooth Version 1.0)が固まった1999年7月。しかしこの時点では,機器メーカは試作機を開発できても,「Bluetooth対応」をうたう製品を市場に出荷することはできなかった。Bluetooth対応機器の出荷に向けて三つの障害があったからだ。

 一つは,Bluetooth対応機器がほかの機器と確実に相互接続することの認証作業である。この認証作業を経なければ「Bluetooth対応」とは認められない。

 二つ目は,機器を低コストに開発し量産するための作業である。この作業に必要な測定器が市場になかった。量産コストを抑えるためには,部品コストを削減することはもちろん,量産ラインでのテスト工程をなるべく省略するような設計が必要になる。その設計工程の要となるのが,変調信号などの物理仕様を解析する測定器である。量産ラインで実際に物理仕様をテストする測定器も欠かせない。また開発コストを抑えるためには,開発作業を効率化できる上位プロトコルの解析が可能な測定器が必要になる。  このほか国内では,Bluetooth対応機器が電波法などの法規に適合していることを確認する技術基準も未整備だった。

1999年末~2000年半ばに転換

こうした状況が,1999年末ころから変わり始めた。そして2000年半ばころには,機器メーカが製品化するために必要な環境が整う(図1)。Bluetooth対応機器の出荷前に欠かせない二つの作業を進めらるようになるからだ。

  一つ目の相互接続性を確認する作業については,2000年半ば~2000年末に問題が解決しそうだ。1999年12月,Bluetoothの標準化団体であるBluetooth SIG(Special Interest Group)が,相互接続性を確認する方法について詳細に規定した仕様「PRD (Qualification Program Reference Document)Version0.8」を発行した。機器メーカは,PRDに基づいて機器の相互接続性を確認すれば,「Bluetooth対応」と明記した製品を市場に出荷できる(「機器の相互接続性を認証する仕組みがまとまる」参照)

  もっとも2000年2月現在では,機器メーカは,PRDに基づいて相互接続性を第3者から認証される段階にはない。PRDで規定している,相互接続性を確認する試験機関「BQTF(Bluetooth Qualification Test Facility)」が,存在しないからである。しかし,「Bluetooth SIGの標準化動向を見ていると,2000年中ごろ,遅くとも2000年中にはいくつかの試験機関が決まるはずだ」(欧州技術支援センター)。

  二つ目に挙げた機器を低コストに開発し量産するための作業も可能になり始めている。量産コスト削減に必要な物理仕様の解析が可能な測定器が,1999年後半に続々と市場に登場し始めた(表1)。量産ライン向けの測定器は,2000年末ころに登場する。開発効率の向上につなげられる上位プロトコルの解析が可能な測定器も2000年初めに発売された。

  さらに国内で未整備だったBluetooth対応機器を出荷するために必要な法規への技術基準もまとまった。2000年1月,ARIB(電波産業会)は,Bluetooth対応機器が電波法などの法規に合致しているかを試験するための技術基準「第二世代省電力データ通信システム/ワイヤレスLANシステム標準規格」(ARIB STD-T66 1.0版)を発行した。この技術基準に基づき,TELEC(テレコムエンジニアリングセンター)で試験をすることで,機器メーカは製品の出荷ができるようになる。

機器の相互接続性を 認証する仕組みがまとまる

 Bluetoothの標準化団体であるBluetooth SIG(Special Interest Group)は,機器メーカやモジュール・メーカが開発した製品が,仕様に合致することを確認(認証)する仕組みを設けている。この仕組みを規定しているPRD(Qualification Program Reference Document)の現行仕様はVersion 0.8。仕様は未完成であるが,大枠は固まった。未完成の部分は,一部のプロファイルしか認証できない点などである。

 PRDの規定する認証の仕組みでは,BQA(Bluetooth Qualification Administrator)と呼ぶ機関をBluetooth SIG内に設け,ここで仕様に合致したことを認証した機器を管理する。さらに企業や団体のなかから,仕様に合致していることを認証するBQB(Bluetooth Qualification Body)と呼ぶ機関と,実際にテストを行なうBQTF(Bluetooth Qualification Test Facility)と呼ぶ試験機関を決める。  機器メーカやモジュール・メーカが,開発した機器を認証したい場合は,まずBluetooth SIGのWWWサーバから,必要な書類をダウンロードしておく。そして機器と機器に関する仕様を書類に記してBQTFに渡す。BQTFは機器をテストし,テスト結果を書類にまとめてBQBに提出する。BQBは,提出された書類を審査して,認証する場合に,BQAへ結果を伝える。BQAは,WWWサーバ上に公開している認証済みの機器リストに,その機器を追加する。

 機器メーカは,このような認証を取得した機器に「認証ロゴ」と呼ぶステッカーを貼り,他のBluetooth対応機器との相互接続が可能なことを示す。

TELECなどがBQTFへ名乗り

 現在,こうした枠組みは決まったものの,稼働していない。BQTFが決まっていないためだ。国内には,少なくとも三つの企業または団体がBQTFとして認定を受けたいとの意向を表明している。独CETECOM 社の日本法人である欧州技術支援センター,赤外線データ通信のIrDA(Infrared Data Association)方式の相互接続性を確認している合弁企業オープンインタフェース(国内の複数の電機メーカが出資),無線機器が電波法などに適合しているかどうかのテストをしている財団法人TELEC(テレコムエンジニアリングセンター)である。BQBについては,すでに5社が決まっている。

 ちなみに,このように試験設備を認定し機器を認証する仕組みは,欧州域内で出荷する機器が電磁波などの規制に適合しているかどうかを認証する仕組みが基になっている。

(以下,日経エレクトロニクス,2000年2月28日号,no.764に掲載)