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米Rambus Inc.が日立製作所を特許侵害で訴えたことを受けて日本のDRAM業界が騒然としている。
「こんな基本特許,いつ成立していたのか」――。
ひょっとすると,シンクロナスDRAMはおろか次世代メモリとして期待高まるDDRモード付きDRAMも抵触する。
特許の内容を分析したDRAM技術者の多くは「全面的に回避するのはほぼ不可能では」と驚愕している。

弁護士の桐原和典氏に聞く:Rambus特許裁判に学ぶ法律基礎知識

 2000年1月17日,Rambus社は日立製作所を特許侵害で訴えた。シンクロナスDRAMやDDR(double data rate)モード付きDRAMといったメモリ製品だけでなく,これらのメモリ用インタフェースを備えたマイクロプロセサ(SH―2,SH―3,SH―4,SH―5)も対象になる。Rambus社は,対象製品の製造,販売,使用の停止と米国への輸入差し止めを請求した。

  特許紛争勃発の知らせは,インターネットを通して即日,世界中のDRAMメーカを駆け巡った。「なんだ,ライセンス交渉のもつれか」と,最初は他人事のように受け止めた技術者が多かった。ところが特許の内容の調査が進むにつれ,事の重大さが明らかになっていく。「こんな基本特許,いつ成立したのか」(あるDRAM技術者)。

  さらにこの反応は驚きから不安に変わる。「ひょっとすると,うちのDRAMも侵害の対象になるのでは。次に訴えられるのは自分の会社かもしれない」…。

  半導体メーカ各社は,次世代のDRAMインタフェースとしてDDR技術に期待をかけている。そのDDR技術の旗振り役ともいえる日立製作所が訴えられ,しかもDDRモード付きDRAMが訴訟の対象となっているだけに,他社もこの裁判を対岸の火事とは笑っていられない。もしRambus社が勝訴すれば…(中略)。

米国特許番号 申請日 成立日 タイトル
5,915,105 1997年11月26日 1999年6月22日 Integrated Circuit I/O Using a High Performance Bus Interface
5,953,263 1998年11月20日 1999年9月14日 Synchronous Memory Device Having a Programmable Register and Method of Controlling Same
5,954,804 1997年2月10日 1999年9月21日 Synchronous Memory Device Having an Internal Register
5,995,443 1999年3月4日 1999年11月30日 Synchronous Memory Device
Rambus社の特許(表:本誌)

サブマリン特許が浮上

 これほどの「強い特許」がこれまで知られていなかった背景には,米国特許制度の特異性とDRAMメーカの「油断」があるといえそうだ。

  Rambus社の特許はもともと,1990年4月に出願された。公開制度を採る日本や欧州とは異なり,米国では出願された特許が明るみに出ることはない。水面下で審査が行なわれる。Rambus社の特許は,審査の過程で複数の特許に分割され,そのうち四つが1999年に相次いで成立した。DRAMメーカには,9年間も水面下に潜っていた特許がいきなり浮上したようにみえる。このため米国でこうした特許を「サブマリン特許」と呼ぶ。

  DRAMメーカが,Rambus社と似たインタフェース技術の開発に取り組んでいたのは1995年ころにさかのぼる。「あの時点では,くまなく特許を調査した。特許侵害の恐れはないと判断したからこそ,DDR技術の開発に着手したのに」(ある技術者)とこぼす。 サブマリン特許は,潜行中はその存在を察知することが難しい。しかし成立後は早期に発見することもできるはず。これに対して複数メーカの技術者は,…(中略)。

Rambus社が発明したと主張する技術  関連する特許    特許使用をRambus社が主張するメモリ  
5,915,105 5,953,263 5,954,804 5,995,443 Rambus仕様DRAM DDRモードDRAM シンクロナスDRAM
PLLをチップ上に実装したDRAM      
転送速度をクロック周波数の2倍に高める技術      
バースト長がプログラマブルなDRAM      
レンテンシがプログラマブルなDRAM  
2ビットを用いてプリフェッチする機能を備えたDRAM        
Rambus社が主張する特許の適用範囲(表:Rambus社の資料を基に本誌が作成)

(以下,日経エレクトロニクス,2000年2月28日号,no.764に掲載)