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日経エレクトロニクスが運営するWebサイト「NE Online」に,IEEE1394の「産みの父」といわれるMichael Teener氏から一通のメールがとどいた。IEEE1394は民生機器業界で着々と普及している。パソコン業界ではどうかといえば,DV編集をキーワードに,IEEE1394を採用したパソコンの製品化も相次いでいるとはいえ,ストレージ装置やプリンタ,スキャナといった入出力装置への普及は十分とはいえない。こうしたなか,USB2.0の標準化という不穏な動きもある。そんななかで「産みの父」といわれるTeener氏がIEEE1394への期待をつづったメールを紹介する。Teener氏は,Apple Computer, Inc.でFireWireの開発を指揮したのち,Apple社を去り,FireWire関連技術のベンチャー企業「Zayante社」を立ち挙げた。現在はZayante社のChief Technical Officer。

1394:What do we have?(by Michael Teener)

 IEEE1394の開発が始まったのは1986年のことだった。シリコンバレーのいろいろな企業から技術者が集まり,「高速シリアル・バス」の仕様を定義するための小さな作業部会を設けた。Stanford Linear Acceleraor,米Hewlett-Packard Co.,米Intel Corp.,米National Semiconductor Corp.などの代表者が顔をそろえていた。高速バスは,P1394委員会で仕様の検討が始まった。既存の32ビット・パラレル・バスを組み合わせて使っても支障をきたさないシリアル・バスの開発を目的としていた。最初の仕様案「Draft 1」が発行されたのは1987年のことだった。一組のより対線を使い,データ伝送速度は2Mビット/秒および8Mビット/秒に過ぎなかった。Isochronous転送モードは規定されていなかった。

  そのころからは随分と時間が経過したものだ。オールラウンドに利用できる最高のディジタル・インタフェースに仕上げることができたと,私は自負している。ユーザにとって,きわめて使いやすいインタフェースだし,性能も十分に高い。設計者にとっては,システム全体のコストを抑えられるうえ,製品寿命を長らえさせられるというメリットもある。

Ease to use

 IEEE1394が使いやすいインタフェースであることには多くの理由がある。そのうち,もっとも重要なものを二つだけ挙げておこう。

1) コネクタが小さく,ケーブルは細く扱いやすい。特に,パソコン・メーカが好んで採用している6ピン・コネクタはすばらしい。あまりとりざたされない特徴だが,ケーブルがぬけやすいということも重要だ。ケーブルに過重がかかったときに,パソコン(あるいはプリンタ,ハード・ディスク装置,カメラ)を放り投げなくてもすむ。ケーブルだけがうまくはずれるように設計されている。

2) ケーブルを差し込むと,システム構成を自動認識する。ネットワーク構成を初期化する機能がハードウエアで組み込まれている。WindowsあるいはMacOSが設定を変更するのをまつまでもない。真のプラグ・アンド・プレイ(Plug and play)を実現できるわけで,差し込んで祈るプラグ・アンド・プレイ(Plug and pray)とは一線を画する。

Great Performance

 IEEE1394では,広告効果をねらってデータ転送速度を決めたわけではなく,トータルなシステム性能を引き出すのに適切な速度は何かを考慮しながら,データ転送速度を決めた。エンド・ツー・エンドで真のデータ転送速度がどの程度になるかが重要である。たとえば,IEEE1394のインタフェースで,SBP-2プロトコルを採用したとすれば,ハード・ディスク装置に対して提供可能な平均データ転送速度が40Mバイト/秒に達する。これは瞬間のピーク性能ではない。長い時間にわたってハード・ディスク装置が享受し続けることが可能な性能である。実際,Apple社の技術者が調べたところ,PCIバスが主記憶にデータを送る性能をIEEE1394は上回ることが明らかになった。

 そんな魔法のようなことが可能なのは,IEEE1394は真のメモリ・バスと同じアーキテクチャを採っているからだ。具体的には,メモリ・マップトI/O方式を採用しているので,メモリ・アクセスを容易に実現できる。つまり,その意味ではPCIバスとなんら変わりがない。ちなみにPCIバスは64ビットのメモリ空間しかないが,IEEE1394では128ビットのメモリ空間をもっている。IEEE1394は,I2Oと呼ぶデバイス・ドライバの実現方式と同じように,周辺機器が容易にメモリをアクセスできるのである。しかも拡張性が高く,メインCPUへの付加が小さくてすむ。

 性能面では,IEEE1394について特筆すべきことがもう一つある。ピア・ツー・ピアのIsochronous通信機能である。この機能があるおかげで,ノード間のデータ転送速度が保証されるうえ,遅延時間は最悪でも250μs以下と小さくなる。高速なデータ転送速度を必要とするストリーミング・ビデオのデータなどに向く。高品質を低価格で実現できるのが特徴といえる。こうした機能を備えているからこそ,IEEE1394は民生機器市場で広く受け入れられることに成功した。Low System Cost 機器設計者は常に,トータルなシステム・コストをどれだけ下げられるかに注意を払っている。この点からIEEE1394に競合するインタフェースはない。

 ほかにも選択肢はあるように見えるが,実際に比較対照となり得る技術は見当たらない。Fibre Channelは,ハードウエアとソフトウエアへの負担が重いうえに,Isochronous転送モードに対応していない。USBは速度が遅い。しかもピア・ツー・ピア接続に対応してない。

  (1) 高速であること,(2)ピア・ツー・ピア接続の機能を備えていること,(3)Isochronous転送モードを備えていること,という三つの条件を満たしていることから,IEEE1394はパソコン用のインタフェースをすべて統合する能力があるといえる。いまのパソコンや民生機器は,接続インタフェースがあまりに多すぎる。IEEE1394さえあれば,LANもプリンタもストレージ装置も,ビデオも,オーディオ機器も,なんでもつながる。拡張ボード用のスロットも不要になる。IEEE1394を使う方が,拡張スロットを使うより高速なデータ転送が可能だからだ。

A Long Life

  IEEE1394は長寿命であるということも,機器設計者にはありがたいことだ。現時点で,データ転送速度は400Mビット/秒に達している。S400対応のパソコンは,Apple社やCompaq Computer社から発売済みだ。800Mビット/秒の技術デモも披露された実績がある。2001年には,1.6Gビット/秒に対応した製品も登場することだろう。機器設計者は,ごくわずかな変更を施すだけで,こうしたスケーラビリティに対応できる。

  Extending the Standard: P1394b 新しい標準仕様「P1394b」を規格化しようという動きもある。標準仕様は1999年末までに決まる予定である。P1394bは,距離をより長く,速度をさらに高速にすることをねらった規格である。8B10B符号化方式を採用するなど,既存の規格に若干の変更を加えることで,シールド付きより対線を使いながら4.5m伝送時の速度を1.6Gビット/秒に高める。光ファイバを使えば100伝送時に3.2Gビット/秒の伝送も可能になろう。このほか,プラスチック光ファイバを用いて,100伝送時に200Mビット/秒以上に高める規格や,カテゴリ5のUTP(Ethernetと同じケーブル)を用いて100m伝送時に100Mビット/秒を実現する規格などがある。

 さらに新しい符号化技術を追加することも可能な規格にしてある。たとえば電話線(カテゴリ3のUTB)を使い,100Mビット/秒のシステムを開発したメーカがあれば,その方式を流用することも可能になる。Competition:(my only comment on USB2) USB2.0について率直な感想を言わせてもらおう。個人的には,大いに歓迎できる技術といえる。

 いまのパソコンには,もうすでにUSBが付いている。これを最大限に利用しない手はない。しかし,その先行きには疑わしい面もある。2001年に480Mビット/秒を実現できるのだろうか。それに意味はあるのだろうか。私の根拠はこうだ。IEEE1394は,家庭のパソコンと民生機器をつなぐうえで,もう決まった(Givenの)インタフェースといえる。これについてはUSBの信奉者も合意する。そのために,400Mビット/秒のインタフェースをつけ,コストも上乗せしているわけだ。さらにそのうえ,2001年に登場するインタフェースのために,新たなコストを発生させなければならないのだろうか。

A Personal Prediction

1994年に,1394TA(Trade Association)の会合で私は次のように未来を占った。 ■ 1995年末までに,少なくとも4社のパソコン・メーカがIEEE1394を装備する。 ■1996年末までに,IEEE1394は民生機器やラボラトリ・オートメーション,産業機器で主流になる。 ■ 1997年末までに,あらゆるコンピュータで主流のインタフェースとして組み込まれる。

I was wrong(mostly)

  民生機器市場についての私の予測は当たっていた。ある意味では,保守的すぎたともいえるくらいだ。しかしApple社やCompaq社,NECがパソコンにIEEE1394を装備させたのは1998年のことで,私の予測より3年も後のことだった。ラボラトリ・オートメーションについては予測の4年後になる2000年に,HP社やTektronics社,横河電機,National Instruments社などが製品化を予定している。産業用機器にこうした変化がいつ起こるかについては,私はまだ確信をもっていない。しかしいまでは勇気をもって未来を占える。2000年には,家庭用パソコンのほとんど,パソコン市場全体の約25%に,IEEE1394が装備されることだろう。そして2002年にはすべてのパソコンにP1394bがつく。

Finally

… 1986年から,随分と長い道のりだった。 …何度も紆余曲折があったし, …これからも問題にぶつかることはあるだろう。 …われわれが期待している以上に時間はかかるかもしれないが, …最後には目的地にたどりつくはず。そして「待った甲斐がある(it was worth the wait)」と感じる日が来ることだろう。 (Michael Teener)

Zayante,Inc.269Mt.HermanRd.#201, Scotts Valley, CA95066-4000 mike@zayante.com