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図1 「nano」のフロントビュー
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図2 サイドビュー
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図3 内装(デラックスバージョン)
図3 内装(デラックスバージョン)
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図4 内装(スタンダードバージョン)。エアコンもラジオもなにもない
図4 内装(スタンダードバージョン)。エアコンもラジオもなにもない
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図5 報道陣でごった返す会場。揉みくちゃにされながら,なんとかクルマに近づいて写真を撮った
図5 報道陣でごった返す会場。揉みくちゃにされながら,なんとかクルマに近づいて写真を撮った
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 インドTata Motors社は,2008年1月10日午前11時30分(日本時間午後3時),モーターショー「AUTO EXPO2008」の会場で,かねてから注目されていた10万ルピー(約30万円)カーを発表した。名前は「nano」(図1~2)。同車と同時に登場した会長兼CEOのRatan Tata氏は,「国民車」(THE PEOPLE'S CAR)であることを強調し,インドの一般的な国民の移動手段が自転車,バイク,3輪車と変遷してきたことをスライドを使って説明し,その延長線上に今回の「nano」があると説明した。インド国内で生産し,2008年中の発売を目指す。

 サイズは,全長3100mm,全幅1500mm,全高1600mmで,623ccの2気筒ガソリンエンジンを搭載。RR(後部エンジン,後輪駆動)である。最高出力は24kW(33PS)。最高速度は105km/h。外板はスチール製。樹脂の使用比率は通常のモデルと同程度という。

 また,環境と安全対策に注力していることも強調した。Tata氏は,欧州の排ガス規制「Euro4」に対応していると明らかにした。衝突安全技術についても,ある基準を満たしていると発表したが,詳細は発表会場では明らかにしなかった。

 車種は,スタンダードバージョンとデラックスバージョンの2種類がある。二つの仕様の違いの詳細はまだ明らかではないが,会場に登場したクルマを見る限り,デラックスバージョンの内装は高級感があり,パワーウインドー,エアコン,ラジオなどが標準装備されているように見える(図3)。一方のスタンダードバージョンには,これらの装備が見当たらない(図4)。

 肝心の価格については,会場では明言しなかったが,Tata氏はスライドの中で,日本のスズキ会長である鈴木修氏の「10万ルピーのクルマは非現実的である」というコメントを紹介し,「こういうことを言う人がいるが,Tata社はブレークスルーによって可能にした」と語り,10万ルピーまで下げることが大きな目標だったことをうかがわせた。

 ただし,エアコンなどの装備を徹底的に省いて,無理やり10万ルピーのグレードを作った感があり,現実的には猛暑のインドではエアコンなしのグレードは厳しいという見方もある。デラックスバージョンの価格は,20万ルピー以下であることは確かではあるが,10数万ルピーだと見られる。

 ボディのサイズ感や質感は,ドイツDaimler社の「スマート」に近い。Tata社は創業時にDaimler Benz社(当時)から技術供与を受けていた経緯があることからDaimler社の影響を感じさせる外観であった。

 いずれにせよ,スズキの独壇場であるAセグメント市場に,さらに低価格の新しいカテゴリー(Aセグメントマイナスと呼ばれている)の車種を投入することによってどの程度の市場拡大が図れるのか興味深い。一方のスズキは,1月9日に発表したように「コンセプトAスター」の発表によってAセグメントの高級化(Aセグメントプラス)を図っており,Aセグメント巡って,両社のつばぜり合いはますます激化しそうだ。

 また,こうしたAセグメント小型車を巡る攻防はインド市場に限らず,全世界の自動車メーカーのクルマの低価格化がどこまで進むのかという興味とともに,注目が集まっている。今回の「nano」の発表会場にはインド国内の報道陣に加え,日米欧のメディア陣も含めて2000人を超す記者が詰め掛け,会場はごった返した(図5)。入りきれない記者が入り口のスタッフともみ合い,騒然とする一幕もあった。

【追記】記事初出時に「地元紙の報道では最高時速75mph(120km/h)」としたが、記者会見で最高速度は105km/hと発表された。また,外板は樹脂ではなくスチール製。地元紙などで「樹脂を大量に採用している」と報道されたが,樹脂の使用比率は通常のモデルと同等であることが記者会見で明らかになった。

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