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 松下電器産業と国際電気通信基礎技術研究所(本社:京都府相楽郡精華町,ATR)は,日常の話し言葉を日英音声翻訳できる技術を開発した。音声による日英双方向の翻訳を,リアルタイムで処理できる。これまで研究段階であった同技術を,ノイズに対する音声認識精度の向上,プログラムの"軽量化"などにより,ノート型パソコンでも利用できるようにした点が特徴だ。製品化に関する具体的な時期は未定。

パソコンでもほぼリアルタイムに双方向翻訳

 2社は,日英双方向音声翻訳技術を採用した海外旅行用英会話ソフトを公開した。「こんにちわ」と音声で入力すると,ほぼリアルタイムに「Hellow」と英語の合成音声を出力する仕組みだ。英語で音声入力したときも,ほぼリアルタイムに翻訳した日本語を音声出力できる。
 公開したソフトは,使用するメモリー・サイズが160~170MBの常駐型プログラム。辞書登録単語数は日英とも各4000語。記者会見時には,動作周波数333MHzのPentium IIと192MBのメイン・メモリーを搭載したノート型パソコン上で稼動させてのデモを実施した。
 この技術を実装したソフトは,パソコン用のほか携帯用の翻訳機器,無線ネットワークを利用した翻訳システムへの組み込みなどの用途も考えられるという。今後は,応用可能な分野の見極めながら開発をすすめ,実用化を目指す。

方言の英訳も可能に

 2社が共同開発した日英双方向音声翻訳技術は,(1)音声認識技術,(2)日英/英日言語変換技術,(3)音声合成技術---の3つに分かれる。さらに,音声認識技術は,入力された音声を正確に認識する技術と,話し言葉や方言などいわゆる「標準語」でない言葉に対応するための技術と,2つに分かれる。
 カーナビゲーション装置の音声案内システム,日本語ワープロ機器による文章読み上げ技術などを持つ松下電器産業は,主に音声入出力部分の技術を提供。 ATRは,同社が98年10月に発表した「システムATR-MATRIX」をベースにした音声認識技術と日英/英日翻訳技術を提供した。

日本語の音声認識率は約90%

 パソコンで利用する場合,音声と同時に入力されてしまう周囲からのノイズが問題となる。このため,入力された音声データと比較する時に,あらかじめ用意したノイズのない音声データにノイズを被せてから比較する方法を採用した。また,話し言葉などに対応するため,単語のつながりを推測しながら標準的な文章に置き換える工夫をしている。
 音声認識率は,日本語の場合で約90%だという。英語の場合はさらに精度が低くなるという。音声認識を誤ると,正確な翻訳ができなくなる。これを解決するため,(1)あらかじめ登録した用例から類推して翻訳する技術,(2)隣り合う1つ~3つの単語の組み合わせから,意味的につながる並びとなっているかどうかを確認して翻訳する技術---などを実装する。これら技術を利用して,さらにあいまいな部分は翻訳しないなどの工夫を加え,誤訳を抑えたという。
 また,C言語での開発,翻訳アルゴリズムの見直し,辞書登録した単語数を限定する--などにより,プログラム容量と使用するメモリー容量を抑えたという。(加藤 慶信=ニュースセンター)

■問い合わせ先:
   松下電器産業 先端技術研究所 企画推進グループ 電話0774-98-2509
   国際電気 通信基礎技術研究所 総務部秘書室 電話0774-95-1113