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 MEMS 2008では,昆虫の体に電極を差し込んでラジコンのように制御しようとした研究発表が2件あった。発表したのはUniversity of Cornellの研究グループと,University of Michiganを中心とする研究グループである。

 まず,Cornell大は,幼虫がタバコの葉を好んで食べる「tabacco hawkmoth」という名の大型の蛾を利用した。電極はさなぎ時代の特定の時期を選んで差し込んだ。さなぎの時期は,実は内容物が流動的で,電極を差し込んでも組織を痛める恐れが小さいのだという。実際,羽化率は90%超と比較的高い。

 電極はポリイミド基板に配線を施したもの。この電極をさなぎに差し込んでおき,さなぎが羽化したところで,マイクロコントローラやボタン電池2個,LED1個から成るモジュールを取り付ける。モジュールの面積は8mm×7mm,重さは計500mgと軽い。

 Cornell大学は,電極を蛾の羽を上下させるための筋肉に差し込み,電気パルスを送って羽を強制的に動くようにした。左右の羽は独立に動かせる。パルスの周波数を上げると,虫の羽もそれに応じて速く羽ばたく(実験の様子を示す動画)。この蛾の実際の羽ばたき速度である20~25Hzにすることも可能だという。

 ただし,実際にこの強制的な羽ばたきで空中を飛行させることは「離陸スレスレまでいった」(Cornell大)ものの,まだ成功していない。羽を強制的に振動させても,それが本当の羽ばたきと同じになるかどうかは分からないというのが理由の一つである。

Michigan大はカナブンを自在に操る

 一方,Michigan大は,甲虫の一種である北米産のカナブンにICとボタン電池,さらにはLED10個で構成する飛行方向の指示器までを搭載し,外部からの操作でカナブンの飛行を細かく制御することに成功した。離陸や着陸,上下左右への飛行方向の変更なども実現した。

 Cornell大との違いは,羽を直接電気パルスで制御するのではなく,昆虫に飛行の開始や停止,左右上下に飛ぶ指示を電気パルスにして送り込むという手法をとったことである。飛行自体は昆虫に任せて,その操縦桿だけを握ったわけだ。

 この二つの研究グループは,いずれもこれまで非生物の部品から成る「MAV(micro-air-vehicles)」という超小型飛行体の研究を進めてきたという。ところが,重さや強度などの高い壁にぶつかり,「理想的な飛行体」(Michigan大)である昆虫に白羽の矢を立てた。

 Michigan大によれば,今後はもっと大型の甲虫,つまりカブトムシなどで飛行の制御を試みるという。「甲虫の中には,時速7~14kmの速さで3時間も飛ぶものがいる」(Michigan大)。実際,カブトムシであれば,無線モジュールも積んで完全にラジコンのように飛行を操作することもできるという。