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 MIPS64系の5Kファミリは,R5000に近い,条件付2命令同時発行のスーパースケーラである。FPUの有無で,「5Kc」と「5Kf」という2種類のコアがある。同ファミリに続き2000年にハイエンド品としてラインアップに加わったのがMIPS64 20Kである。パイプライン段数も増え,完全2命令同時発行で,FPUこそ持たないがMIPS-3D ASE(グラフィック/マルチメディア拡張向けのSIMDアクセラレータ)を搭載する。このMIPS64 20Kの大きな特徴は,ハード・コアで提供したことだった。MIPS32ファミリやMIPS64 5Kはいずれもソフトコア,つまりフルシンセサイザブル(Full Synthesizable)なコアだった。動作周波数は0.13μmプロセスで500MHzを超えるMIPS64 20Kは,さすがにフルシンセサイザブルというわけにはいかなかったようだ。


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 実は,さらにこれに続き「MIPS64 25K」というコアが予定されていたが,公式に発売されることなく消えてしまった。実は厳密に言えば,このコアを使った東芝の「TX99」というSoC(system on a chip)が2002年に発表されているので実在はしていたことになる。

製品展開が続くMIPS32

 MIPS32系の製品ラインアップの強化は依然として続いている。まず2006年に,MIPS32 24KをベースにSMT(Simultaneous Multi-Threading)を搭載した(MIPSはこれをMT ASEと呼んでいる)「MIPS32 34Kファミリ」を発表。更に2007年にはMIPS32 24Kの後継として17段ものパイプラインを搭載した「MIPS32 74Kファミリ」を発表した。2008年は,最大4コア構成で8スレッドの同時実行を可能にするMIPS32 1004Kを発表している。これらはいずれもフルシンセサイザブルだ。逆に言えばハード・コアだったことがMIPS64 20Kや25Kが普及せずに終わった要因だったのかもしれない。

 ただ,MIPS64そのものは広く利用されている。というのは,MIPS Technologies社はコアそのものだけでなくアーキテクチャ・ライセンスという形でMIPS64を様々なベンダーにライセンス供与しており,これを受けた会社が独自にMIPS64をベースに拡張しているからだ。例えば米RMI社は,すでに1コアあたり4スレッドを扱える独自のMIPS64互換プロセサを2個~8個集積し,最大1.2GHzで動作するXLRプロセサを展開。米Cavium Networks社も,最大16個もの「cnMIPS64コア」を集積した「OCTEON Plus」というシリーズを提供している。このほかにも米PMC-Sierra社の「RM7000シリーズ」,米Broadcom社が買収した米SiByte社の「SB-1」など,MIPS64をベースとした製品は多い。こうした製品の多くが特にネットワーク分野で活躍している。これらはライセンスを受けたベンダー各社が独自にMIPS64を強化していっており,今後も性能が上がる余地はある。逆に言えば,64bitはこうしたライセンシーに任せ,MIPS Technologies社は32bitプロセサの強化に専念しているのが現状と言うのが正しいのであろう。