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雑音対策は万全,熱対策はなし

 今回の分解では,メイン基板の構成と,雑音や熱への対策も調べた。

 ソフトウエアの実行などを担うメイン・モジュールには,Apple社のロゴが入った約14mm角のチップがある(p.3の図4)。これが,ARMコアを使ったマイクロプロセサや,USBコントローラなどの周辺回路を集積したSoCとみられる。チップ上の文字から推測すると,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.製で,同社が量産中の携帯型AVプレーヤー向けSoC「S5L8700」の次世代品である可能性が高い。MPEG-4AVC/H.264の復号化もこのチップが受け持つようだ。米Semiconductor Insights,Inc.の調べによれば,同一パッケージ内に64MバイトのDRAMを2個積層しているという。

 無線モジュールには,各種の通信方式に対応するチップを実装してあり,全面が金属製のシールドに覆われていた。これを取り除くと,(1)GSM/EDGEのRFおよびベースバンド処理回路,(2)パワー・アンプ,(3)フロントエンド・モジュール,(4)無線LANおよびBluetoothという4領域に分けてあり,領域の境界にはシールドの壁があった(図8)。機器内の各所で発生した電磁雑音による悪影響を抑えるためだろう。また雑音の発生源になりやすい4Gバイトのフラッシュ・メモリには2重のシールドがあった。

図8 Infineon社のGSM/EDGE向けチップセットを採用 GSM/EDGEのRFトランシーバICとベースバンドLSIは,InfineonTechnologies社製である。無線LANおよびBluetoothの通信部はモジュール品を採用せずに個別部品で構成している(a)。裏面はメイン・モジュールと接続するためのコネクタを実装している(b)。部品のメーカーと用途は本誌の推定。(写真:林 幸一郎)
図8 Infineon社のGSM/EDGE向けチップセットを採用 GSM/EDGEのRFトランシーバICとベースバンドLSIは,InfineonTechnologies社製である。無線LANおよびBluetoothの通信部はモジュール品を採用せずに個別部品で構成している(a)。裏面はメイン・モジュールと接続するためのコネクタを実装している(b)。部品のメーカーと用途は本誌の推定。(写真:林 幸一郎) (画像のクリックで拡大)

 電磁雑音対策には厳重な反面,「発熱対策とおぼしきものは見当たらない」(分解に協力した技術者)。例えば,最も発熱量が多いとみられる前述のSoCは,メイン・モジュールと無線モジュールに挟まれた,熱がこもりやすい場所にあるものの,特に放熱に配慮している形跡はなかった。強いていえば,シールドと,金属製の綿のような導電性のシートが金属製のフレームや背面の筐体に触れているため,筐体に熱が逃げる程度である。このため,映像の再生などを実行していると背面の上部が熱くなってくる。「日本のメーカーが製品を出す場合には許容しない温度だ」(同氏)。