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 iPhoneはいわゆる「スマートフォン」と呼ばれる製品の一種である。ただし,そのユーザー・インタフェースは決してスマート(賢い)とはいえない。Apple社が1993年に発売したPDA「Newton」のユーザー・インタフェースと比べると,その差は歴然としている。Newtonには,ユーザーが手で書いた文字や図形を認識したり,例えば「Call Tom」と書き込むと電話帳からTomの電話番号を探して電話をかけたりといった,知的な要素がふんだんにあった(図3)。iPhoneには,ユーザーが機器を賢いと感じるような要素はあまりない。


図3 Newtonの方が賢かった
Apple社が1993年に発売したPDA「Newton」のユーザー・インタフェースには,手書きの文字や図形を認識したり,ユーザーが文字で書いた指示を解釈して実行したりといった,知的な要素があった。iPhoneには,このような要素はほとんどない。

タッチ・パネルの確定方法を工夫

 それでは,iPhoneのユーザー・インタフェースが他の機器と大きく違う点は何か。これを突き詰めて考えた結果が,冒頭に書いた「タッチ・パネルを使った直接操作と,動的なグラフィックス表示の高度な融合」である。

 タッチ・パネルを用いた直接操作はユーザー・インタフェースの設計上,大きな利点がある。画面に表示した要素を触るだけで操作できるので,ユーザーにとって分かりやすい。実際,カーナビの操作がリモコンからタッチ・パネルに変わったとき,使い勝手が大きく改善された。GUIとタッチ操作はもともとなじみが良いのである。そもそも,パソコンなどで当たり前になっているマウスで画面上のオブジェクトを選択するというGUIの手法自体が,手で触る行為の代替手段だったとも解釈できる。

 ただし,タッチ・パネルを用いたユーザー・インタフェースは,設計が非常に難しい。それを端的に表すのが,ユーザーが画面上の要素を選ぶときに,どのタイミングで確定するかの方法である。我々がiPhoneのユーザー・インタフェースでうまく考えられていると判断したのはこの点だった。iPhoneは,複数の方法をうまく使い分けており,自然な操作性の実現に大きな役割を果たしている。

 確定には大きく分けて二つの方法がある。ユーザーがタッチ・パネルを押した瞬間に確定するのか,離した瞬間に確定するのかである。便宜上前者を「ダウン確定」,後者を「アップ確定」と呼ぶ。

 ダウン確定では,ちょっとでも画面に触ると確定してしまう。レスポンスは軽快だが入力ミスも起こりやすい。アップ確定の場合は,誤って押してしまったら,触っている場所を変更する(指をスライドさせる)とキャンセルするといったルールを盛り込める。