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 ただし,この方法には難点もある。Apple社は,キーボードの操作に慣れてきたら,両手の親指を使って,2本の指で入力することを推奨している。ところが最初の指が離れるまで前の文字が確定しないため,2本の指で連続的に文字を打とうとすると,2本の指が同時にタッチしている時に不具合がでる。一つ確定したら次の文字と,順繰りに文字を打たざるを得ない注3)

注3)iPhoneには,キーボードで単語を打ち間違えた場合に正しいとみられる単語の候補を表示する機能がある。これはユーザーが親指で打つことを想定しているようだ。両手の親指でキーボードを打つ場合,ユーザーは狙った場所よりも外側のキーを打ってしまうことが多い。単語の予測機能は,これを考慮しているようにみえる。

複数の画面操作を混在させる

 タッチ・パネルを介したユーザーの操作は,確定以外にいくつもある。例えばiPhoneのWWWブラウザーでは,ページをスクロールさせたり,指ではじいて流れるように動かしたり,拡大/縮小したりできる(図5)。どの操作の場合もコンピュータ側は,指が触れたり離れたりといった情報しか得られない。ユーザーの意図をなるべく正しく判定するには,触れた場所の座標や離れた場所の座標,触っていた時間などを細かく取得し,場合分けをする必要がある。

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図5 指の動きを異なる操作に対応させる(約58秒の動画)
iPhoneでは,ユーザーの指の動きに応じて異なる操作を実現している。例えばWWWブラウザーでは,画面上で指を動かすだけで,ページのスクロール,ページの拡大/縮小などができる。

 多くのユーザーがこれらの操作を自然と感じるようにするには,意図の判定に使うアルゴリズムや数値を,念入りにチューニングしなければならない。例えばApple社は,「ユーザが指を押してから離すまでに0.何秒たっていれば確定と判断する」といった数字を設定しているはずである。この時間をどれだけに設定するかが問題で,一つの操作に重きを置きすぎると,他の操作が悪影響を受けやすい。

 ユーザー・インタフェースの作り手としてiPhoneで一番感心するのは,このチューニングの部分である。単に画面の動きだけであれば,デモでよく作るような内容といえる。これを製品として使える水準に高めたことが,他社にはなかなかできない点だと思う。