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動的な操作環境の開発には体制の見直しが必要

   iPhoneが実現したような,動的で操作感が重要なユーザー・インタフェースは開発が難しい。日本の機器メーカーの多くが採る開発体制には,このようなインタフェースを作る上で障害になる点がいくつもある。以下では,現在の開発体制の難点と解決策を検討する(表1)。


表1 既存の開発工程でぶつかる問題点と解決策
iPhoneのような製品を作ろうとしたときに,現在の日本メーカーの開発手法では,いくつかの難関を越える必要がある。

仕様書で記述しづらい

 まず問題になるのが,動的なユーザー・インタフェースを仕様書の段階でどのように表現するのかという点である。現状のユーザー・インタフェース開発でも,この点には苦労する。スケッチを描いたり,一連の画面の流れを示す絵コンテ(ストーリー・ボード)を描いたりする(図7(a))。

 これらの方法で,動的なユーザー・インタフェースを記述することは難しい。iPhoneの大きな特徴である操作感の表現は特に困難である。開発の初期段階で操作感などを記述するには,パソコンなどで動作する,ユーザー・インタフェースのシミュレーション・モデルをよく使う。これまでなら紙芝居をぱらぱらとめくるようなもので十分に役立った(図7(b))。しかし動的な操作感を表現するには,最初の段階からかなり綿密に作り込んだ動作モデルが必要になる。

 我々が請け負う仕事でも,最近はこのようなモデルが多くなりつつある(図7(c))。以前であれば,簡単なアニメーションを表示できる市販ソフトを利用して動作モデルを実現できたが,操作感が重要になる製品をモデルで検証するには,微妙なチューニングが必要になる。

 このようなモデルの作成には非常に労力がかかる。今後は,紙に書いた仕様書と動作モデルを,目的に応じて使い分けることになりそうだ。


図7 文書では表現できない
静的な画面構成のユーザー・インタフェースでは,スケッチや絵コンテ(ストーリー・ボード)を描いたり,簡単な画面遷移を実現するプロトタイプで仕様の定義や設計,評価ができていた(a,b)。動的なユーザー・インタフェースの設計で操作感などを設計・評価するには,設計の初期段階から実際に動作するシミュレーション・モデルが必要になる(c)。

ノウハウが属人的

 次の問題点は,動きをデザインするときの手法が確立していないことである。動的なユーザー・インタフェースを設計できる人材はいる。こうした人材は図7(c)に示したような動作モデルを,1~2日で作ることができる。ただし,ノウハウが属人的で,多くのデザイナーが利用できる定石や理論がない。