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 ユーザーの体験の設計方法は,いまだ確立したとはいえない。多くの企業が様々な手法を試行錯誤している段階である。我々も独自に考えた方法をいくつか試している。例えば携帯機器にかかわる体験を考えるときに,手近にあるものを利用して,その形から導き出される行為を参考にしたりしている(図9)。


図9 新たな体験を探る
新しい体験を設計する手法は,いくつか開発されつつある。ソフトディバイスでは,手近にあるものを利用して,その形から導き出される自然な行為を参考にするといった手法などを試みている。

 先述したように,新しいユーザー・インタフェースは,当初はユーザーになじんでもらえない可能性がある。これを解消して普及を進める方策を考えることも重要である。Apple社が,他の製品に使った多くの機能をiPhoneに組み込んでいるのは,個々のアイデアを少しずつ製品に入れて試してきたとみることができる。

 新しいものを受け入れやすい状況をつくるためには,製品そのもの以外のさまざまなメディアの活用も重要である。Apple社ではCEOのSteve Jobs氏自らが製品のデモをして注目を集めるほか,WWWサイトに操作方法を説明した動画をいくつも掲載したりしている注8)

注8) 任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」でも,展示会でのデモやCMなどを使って新しい使い方を浸透させようとしている。Wiiで遊んでいるときに誤ってリモコンを投げて物を壊したという動画がYouTubeに掲載されたりするのも,ユーザーを教育する効果がある。

割り切りがiPhoneの強さ

 iPhoneは編集などを目的としたコンピュータというよりも,iPodのように再生を主としたプレーヤーとして設定されたように見える。これまでにも指摘されているように,iPhoneには足りない要素がたくさんある。写真などの複数選択ができなかったり,テキストのコピーや張り付けができなかったりする。これは,Apple社が考えたユーザーの体験を実現する上での割り切りとみられる。 ユーザー・インタフェースを開発する立場からいえば,特定の手段を使うと必ず利点と欠点がある。だからこそどこに焦点を当てて,どこを切るのかが重要になる。

参考文献
1) Keysほか,「iPhoneはどこがすごいのか」,『日経エレクトロニクス』,2007年7月30日号,no.957,pp.101─110.