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日本TI 営業・技術本部 ビジネス・デベロップメント パワーマネジメント 主任技師の弥田秀昭氏
日本TI 営業・技術本部 ビジネス・デベロップメント パワーマネジメント 主任技師の弥田秀昭氏
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スイッチング周波数が6MHzと高い降圧型DC-DCコンバータICを使って構成した電源回路。2個のコンデンサと1個のインダクタを含めた回路全体の実装面積は13mm<sep>2</sep>と小さい。
スイッチング周波数が6MHzと高い降圧型DC-DCコンバータICを使って構成した電源回路。2個のコンデンサと1個のインダクタを含めた回路全体の実装面積は13mm<sep>2</sep>と小さい。
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 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は,スイッチング周波数が6MHzと高い降圧型DC-DCコンバータIC「TPS62601」を発売した(関連記事1)。これまで同社が市場に投入していたDC-DCコンバータの中で,スイッチング周波数が最も高かったのは3MHzだった(関連記事2)。今回,これを一気に2倍に高めたことになる。
 現在,降圧型DC-DCコンバータIC市場では,スイッチング周波数の高周波化が急ピッチに進行中だ。例えば,米Micrel社は8MHzスイッチング品や,米Linear Technology社は4MHzスイッチング品,米Analog Devices社は3MHzスイッチング品を市場に投入している。このほかモジュール品だが,ベルニクスは5MHzスイッチング品を製品化している。スイッチング周波数の高周波化が進行している背景には,携帯機器の小型/薄型化がある。スイッチング周波数が高ければ高いほど,外付け部品であるコンデンサとインダクタの外形寸法を小さくできるからだ。
 今回,6MHzスイッチング品を投入した日本TIの営業・技術本部 ビジネス・デベロップメント パワーマネジメントで主任技師を務める弥田秀昭氏に,ターゲットとする市場や,高周波化を実現できた技術的なポイントなどを聞いた。

--スイッチング周波数が6MHzと高い降圧型DC-DCコンバータICを製品化した理由は何か。
弥田氏 開発に着手した理由は,携帯電話機などの入出力インタフェース部の電源電圧が1.8Vに低下していることにある。かつては3.3Vと共存していたが,最近になって1.8Vだけになりつつあるのだ。電源電圧が1.8Vに下がれば,Liイオン2次電池の端子電圧が約2.3Vに低下しても使える。低い端子電圧まで使えれば,電池のエネルギーを有効に活用できるというメリットが得られるが,その一方で厄介な問題が発生してしまう。DC-DCコンバータICにおいて,入力と出力の電圧差が非常に小さくなってしまうことだ。2.3Vの入力から1.8Vの出力電圧を作成しなければならない。
 入出力間の電圧差が小さくなれば,V=L×di/dtの関係から分かる通り,出力電圧の応答特性が低下する。この問題を解決するには,インダクタのインダクタンス値(L)を小さくするしかない。計算上は,インダクタンス値を470nHに下ればよい。
 ところが単純にはインダクタンス値は下げられない。スイッチング周波数を変えずにインダクタンス値を下げてしまうと,出力電圧のリップルが大きくなってしまうからだ。つまり,インダクタンス値を下げることと,スイッチング周波数を高めることはセットで行わなければならないわけだ。
 当社従来品である3MHz動作のDC-DCコンバータICでは,1μHのインダクタを使っていた。このインダクタンス値に比べると470nHは約1/2である。スイッチング周波数とインダクタンス値はほぼ比例の関係にある。3MHzの2倍は6MHzである。こうした背景から,スイッチング周波数が6MHzの降圧型DC-DCコンバータICを開発するに至った。

--DC-DCコンバータ回路全体の高さを0.6mmと薄くできることをニュース・リリースで強調しているが,それは当初の開発ターゲットではなかったのか。
弥田氏 その通りだ。入出力インタフェース部の電源電圧が1.8Vに下がったことに対応するために,470nHのインダクタを採用した結果,DC-DCコンバータ回路全体の高さを0.6mmに抑えることが可能になった。ちなみに実装面積も13mm2と小さくなった。当社従来の3MHzスイッチング品を使った場合は25mm2だった。

電源回路を発振させる


--スイッチング周波数を6MHzに高める際に,技術的に問題になった点は何か。
弥田氏 スイッチング周波数が高くなると古典的な負帰還制御を適用しづらくなることだ。一般に,負帰還制御を採用する場合は,その制御系の安定性を確保しなければならない。安定な動作範囲を外れてしまうと,位相が回って発振してしまうからだ。通常,負帰還制御系の帯域幅としては,スイッチング周波数の20%程度を確保する必要がある。例えば,1MHzのDC-DCコンバータICであれば,帯域幅が200kHzの誤差増幅器(エラー・アンプ)をICに集積すればいい。ところが,スイッチング周波数が6MHzに高まると,帯域幅が約1MHzと広い誤差増幅器が必要になる。
 広帯域増幅器の消費電力は大きい。まさしく「大飯食らい」で,軽負荷時にはチップ全体の消費電力の大半を占めてしまうほどだ。これほど大きな消費電力は,携帯電話機などでは許されない。
 そこで今回は,負帰還制御を敢えて採用しなかった。採用したのはいわゆる微分制御である。検出した出力電圧と内部基準電圧をコンパレータで比較し,その比較結果に応じてスイッチをオン/オフする制御方式だ。回路全体としてはリング発振器で,この回路の中にコンパレータが含まれている。リング発振器の発振周波数は10M~12MHz。遅延回路で6MHzに落として使っている。制御方式はPWM(pulse width modulation)で,軽負荷時はPFM(pulse frequency modulation)に切り替わる。

-- この制御方式の欠点は何か。
弥田氏 スイッチング周波数が固定ではないことだ。入力電圧と負荷の状態(出力電流)によっては,スイッチング周波数が6MHz以下に低下し,3MHzに達することもある。従って,EMI対策が若干難しくなる。ただし,可聴周波数帯域には入らないため,それほど大きな問題ではないと考えている。

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