図1●今回考慮したレイアウト依存性 NECエレのデータ。
図1●今回考慮したレイアウト依存性 NECエレのデータ。
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図2●SPICEモデルへの依存性の反映方法 NECエレのデータ。
図2●SPICEモデルへの依存性の反映方法 NECエレのデータ。
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図3●STI(shallow trench isolation)ストレスの依存性を考慮するための演算手法 NECエレのデータ。
図3●STI(shallow trench isolation)ストレスの依存性を考慮するための演算手法 NECエレのデータ。
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図4●STIストレスの依存性を考慮する効果 NECエレのデータ。
図4●STIストレスの依存性を考慮する効果 NECエレのデータ。
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図5●「Calibre」内にSPICEパラメータ調整機能を実装 NECエレのデータ。
図5●「Calibre」内にSPICEパラメータ調整機能を実装 NECエレのデータ。
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 NECエレクトロニクスは,40nm世代以降のプロセスに向けたSPICEモデル開発手法を確立した(ニュース・リリース)。MIRAIプロジェクト(ホームページ)の成果である「SPICEモデルの補正技術」を取り込むことなどで,精度の高いSPICEモデルの開発を可能にした。これで従来のSPICEモデルを使う場合に比べて設計マージンが削減できるようになり,LSIの性能を最大で20%程度高めることが可能になるという。

 プロセスが微細化するにつれて,周辺にあるマスク・レイアウトのパターン形状によってトランジスタの特性が変わってしまう現象が顕在化してきた。この現象はトランジスタ特性のシステマティック・バラつきとか,トランジスタ特性の周辺レイアウト依存性などと呼ばれている(以下,レイアウト依存性)。

 先端プロセスを使う半導体メーカーでは,このレイアウト依存性を考慮したSPICEモデルの開発手法(フロー)の整備を進めており,Tech-On!では,富士通/富士通マイクロエレクトロニクス(Tech-On!関連記事1)や東芝(同2)の取り組みを紹介した。今回のNECエレの発表も,こうした取り組みの一つである。

3種の依存性を考慮

 NECエレによれば,今回のSPICEモデル開発フローでは,(1)ウエル近接効果,(2)STI(shallow trench isolation)ストレス,(3)ゲート・ピッチの変化による特性の変動を考慮している(図1)。このうち,(1)と(2)の一部(ゲート端~拡散層エッジまでの距離による依存性)はもともとSPICEモデルに組み込まれている。(2)の一部の「隣接した拡散領域間の距離」による依存性の考慮にはMIRAIプロジェクトの成果の技術を,(3)の依存性の考慮にはNECエレ独自の技術を使う(図2)。

 同社によると,これまで発表されたレイアウト依存性を考慮のSPICEモデルの開発手法に比べて,今回の手法は次の二つの特徴などを備えている。第1に高精度で処理時間が短いこと,第2に既存の設計フローとの親和性が高いことである。それぞれの特徴には複数の技術や手法が関係するという。

任意形状に対応

 例えば,第1の特徴に関しては,MIRAIプロジェクトの成果の技術が大きく寄与したとする。同プロジェクトでは,任意の周辺マスク・レイアウト形状による依存性を表す演算手法を開発した(図3)。この手法では,ゲート幅方向,ゲート長方向,さらに垂直方向のパターンを考慮可能で,しかもその影響が演算式として定義されている。

 「既発表の手法では過去の経験をベースに多数のTEGパターンを作り,多項式のフィッティングによってSPICEモデルを調整するケースが多いようだ。一方,MIRAIプロジェクトでは物理現象に忠実な解析式をベースに手法を開発した。このため,精度が高い(図4)。さらにSPICEモデル調整に必要なパラメータ数も少ないため,処理時間も短い」(NECエレの山田健太氏,基盤技術開発本部コア開発部シニアデザインエンジニア(デバイス基盤開発グループ))。

既存ツールに実装

 第2の特徴である既存フローとの親和性に関しては,例えば,米Mentor Graphics Corp.のマスク・レイアウト検証ツール「Calibre」に今回の手法を実装したことが挙げられる(図5)。CalibreはNECエレをはじめとして多くの半導体メーカーが使っている標準的なEDAツールである。

 今回のNECエレの手法では,Calibreのマスク・レイアウトの測長機能を使い,レイアウト依存性に関連する寸法を測る。そして,この寸法に応じて,「隣接した拡散領域間の距離の依存性」と,「ゲート・ピッチの依存性」を反映するためのSPICEモデルの調整量(係数)を,上述した演算式などで求める。その演算式はCalibreの中に実装した。

 また,上述のように「ウエル近接効果」と「ゲート端~拡散層エッジまでの距離による依存性」はもともとSPICEモデルに組み込まれており,Calibreの測長機能を使って求めた当該パラメータをSPICEモデルに入れ込むことになる。このように,マクロセルの設計者がこれまで使ってきたツールで,レイアウト依存性を反映したSPICEモデルが開発できる。

 NECエレでは,40nm世代以降のプロセスで作るLSIに向けた,マクロセルの遅延解析モデルの開発に,今回の手法を適用する。今後は,必要に応じて考慮する依存性を増やしたり,処理速度の改善などを図るという。

 なお,同社は,9月5日に東京・品川で開催した「EDA Tech Forum 2008」(ホームページ)で,今回の手法に関して講演している(セッション番号TE-5)。