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 文部科学省は,平成20年度(2008年度)の元素戦略プロジェクトの新規採択テーマ5件を公表した。今年度が2年目となる元素戦略プロジェクトは,熊本大学が提案した「高分散貴金属ミニマム化触媒の物質設計およびプロセッシング」,北海道大学が提案した「貴金属フリー・ナノハイブリッド触媒の創製」,九州大学の「貴金属代替分子触媒を用いる革新的エネルギー変換システムの開発」,東京工業大学の「材料ユビキタス元素協同戦略」,早稲田大学の「ケイ素酸素系化合物の精密合成による機能設計」の合計5件が選ばれた。担当する研究振興局基礎基礎研究課によると,応募件数は84件だった。

 元素戦略プロジェクトは,希少元素や有害元素を用いずに,高い機能を持つ物質・材料を開発し,希少資源の不足問題を解決する代替材料の開発を目指す。期間5年間で基盤的な研究をし,実用化に向けた開発に移行することが目標である。このため,ナノテクノロジー・材料開発推進室によると,元素戦略プロジェクトは研究成果の目標を高く掲げ,完全代替材料や希少元素の使用量を大幅に低減するなどの挑戦的な研究テーマを選んでいる。初年度だった平成19年度(2007年度)は7件のテーマが採択された。

 今回採択された熊本大の研究テーマは,白金(Pt),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd)などの貴金属類の最大用途である自動車用排ガス触媒の貴金属使用量を大幅に低減することを目指す。微量の貴金属を担体表面に完全分離状態で固着させて高い活性と長寿命を両立する。完全分散を実現する物質として,耐熱性オキソ酸塩をアークプラズマプロセスで固着させる方法を研究する。研究代表者は熊本大大学院自然科学研究科の町田正人教授で,三井金属が共同研究機関として参加する。

 北大の研究テーマは,燃料電池の電極触媒向けに非白金系の非貴金属複合体を開発する。高活性のナノ界面をつくって高効率光エネルギー変換素子にすることがポイントである。研究代表者は北大大学院理学研究院化学部門の魚崎浩平教授が務める。

 九大の研究テーマは,燃料電池の電極触媒向けに水分解触媒として働くマンガン含有分子触媒と,酸素活性化・還元機能を持つ鉄系分子触媒を開発する。この両分子触媒を多孔質のチタン表面に高密度に固定した電極を作製する。水素製造用の触媒としても利用できる。研究代表者は,九大先導物質化学研究所の物質基礎化学部門の成田吉徳教授である。共同研究機関として,中部大学と大阪冶金興業,トヨタ自動車,佐川印刷が参加する。

 東工大の研究テーマは,クラーク数が上位の元素で構成する無機固体物質を,ナノ構造,表面・界面の利用,欠陥・異常原子価などの構造要素の工夫を加えて,非銅系の超伝導材料,磁性元素を用いない磁性材料,希少金属を用いない触媒材料などを開発する方法論の確立を目指す。研究代表者は東工大フロンティア研究センター・応用セラミックス研究所の細野秀雄教授である。

 早稲田大学の研究テーマは,構造と組成を精密に制御したケイ素酸素系化合物によってメソ構造材料の合成法と機能設計技術を確立する。これによってメソ構造材料の構造と機能の相関関係を解明する。研究代表者は理工学術院の黒田一幸教授が務める。